「こんなおもろい世界があんねんな」NON STYLEの石田明、舞台仕事で躍動する今
初めて流した涙
石田は『M-1』に対しても半ばあきらめたような気持ちで挑んでいたが、2007年の敗者復活戦で負けたとき、悔しさのあまり涙を流した。初めてのことだった。 「それまでは『M-1』で決勝に行くことにリアリティーがなかったんですけど、やっと決勝の舞台に上がってる自分を想像できたんです。そこから本格的に『M-1』に挑戦することにしました」 石田は『M-1』で勝つために、1つの振りで2回ボケを重ねる特殊な形の漫才を開発した。そして、2008年の大会では見事に優勝を果たし、漫才師として揺るぎない地位を確立した。 その後、テレビの仕事も爆発的に増えた。しかし、石田の心は常に舞台にあった。テレビの仕事では、現場でどんなにウケていてもカットされることがある。舞台の方が自分の性に合っていた。 「あと、僕はそもそも目立ちたがり屋じゃないし、プレーヤーとしてそこまで能力が高い方じゃないし、表に出るのは向いてないんです。相方の井上(裕介)はテレビ大好きやし、いっぱいテレビに出てくれているので、お互いが得意なジャンルに行っておいて、僕はネタ番組とかレギュラーの番組に出るっていうだけで今はいいかな、って」
舞台活動と漫才のネタづくり
一方、舞台の仕事には意欲的に取り組んできた。NON STYLEとしてライブをやるときには、進行用の台本を自分で書いたり、セットの図面を引いたり、音を作ったり、あらゆる裏方の仕事を率先してやっていた。自分でやるとその分だけ制作費が削れるし、新しいことをやると成長が感じられる。つくづく舞台が好きな人間なのだ。 役者として舞台に呼ばれる機会も多くなり、それはそれでやりがいを感じるようになった。舞台の仕事にかかわるようになってから、漫才のネタ作りにも良い影響があった。 「今までは説明過多なところがあったんです。でも、お芝居を経験させてもらったことで『これは目線一個でクリアできるんや』とか、『一人二役ならこういう見せ方にすると見やすいな』とか、いろいろ学ぶことができてめちゃくちゃプラスになりました」