親から相続した空き家、敷地の境界線がわからずトラブルに…円満な売却方法はあるの?【相続専門税理士が解説】
境界線、隣地の所有者とモメてしまったら?
土地境界について、隣地の所有者と話し合いしても合意に至らないケースもあります。合意が難しい場合には「境界確定訴訟」と「筆界特定制度」という2つの制度が利用できます。 ◆「境界確定訴訟」…裁判で決着、時間も費用もかかるのがネック 「境界確定訴訟」とは、裁判所で土地境界の決着をつけるものです。裁判所は原告と被告の主張にとらわれず、境界を確定します。境界の位置について判断できない場合でも、裁判所が判断して境界を決定します。 ただし、境界確定訴訟には時間も訴訟費用も相当かかるため、簡単ではありません。 境界確定訴訟は裁判であり、判決が出るまでに数年かかることもあります。費用についても、土地の鑑定費用、裁判官・書記官の実地検証費用、弁護士費用など、大きな負担となるでしょう。そのため、土地所有者にとっては必ずしも使い勝手のよい制度とはいえません。 ◆「筆界特定制度」…法務局が管理する制度、早くて安価だが紛争解決への効果は… 最近では、境界確定訴訟より「筆界特定制度」を利用するケースが増えています。 筆界特定制度は、裁判所ではなく、法務局が管理している制度です。土地家屋調査士が実地調査を行って法務局に筆界特定を申請し、法務局が調査結果に基づいて土地の筆界を特定します。費用は比較的少なく、手続き期間は比較的短いですが、筆界特定制度はあくまで登記上の問題を解決するものであり、隣地所有者との紛争解決には必ずしも効果があるわけではありません。 ◆筆界特定制度の注意点 筆界特定制度は、通常、申請から特定までの期間は6~9カ月程度、費用も100万円以下になるのが一般的で、訴訟よりも早く境界確定ができ、費用も軽減されることがメリットです。しかし、筆界特定制度はあくまで本来あった筆界を明らかにするだけで、行政処分ではなく、また、筆界を形成する力も持ちません。そのため、筆界特定後に境界確定訴訟が提起されると、別の位置に筆界が決まる可能性もあります。 とはいえ、実務上、筆界特定がされたあとに境界確定訴訟が提起されても、筆界特定の結果が考慮されるため、異なる結果になることはほとんどないようです。 筆界特定制度を利用する際には、まず、土地家屋調査士に依頼し、筆界特定の申請書を作成してもらいます。その後、申請書と必要な添付書類を法務局に提出します。 岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
岸田 康雄