安田純平さんを拘束? イスラム過激派「旧ヌスラ戦線」とは
なぜ安田さんを拉致・拘束しているのか?
安田純平さんを拘束しているのは「ヌスラ戦線」と考えられています。シリアの過激派組織でウェブサイトにビデオを掲載して人質に救命を訴えさせるという手口は、「イスラム国」か「ヌスラ戦線」(アルカイダ)のどちらかに限られると思われます。 そこで疑問が生じるのは、アルカイダ中枢の方針に忠実なはずの「ヌスラ戦線」がなぜこのような非道な作戦を行うに至ったかです。 「ヌスラ戦線」は、北アフリカの「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」(AQIM)やイエメンの「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)、ソマリアの「アルシャバブ」のように日常的に西洋人を拉致して身代金を奪取している他のアルカイダ系グループとは思想性が違うと思われます。すなわち「ヌスラ戦線」は、高潔なジハーディストであるべきというアルカイダ中枢の教えを守ってきました。しかし今回のケースは、恐らくテロリスト側の人質解放の条件は政治的なものではないでしょう。日本は有志連合に名を連ねてはいても、シリアに自衛隊を進駐させているわけではありません。要求は金銭以外にないでしょう。テロリストも背に腹は代えられません。 前項で言及した通り、アルカイダは活動資金にも事欠く状況だといわれています。それほどまでに資金に困っているのでしょう。「ヌスラ戦線」には、「イスラム国」のような確固たる資金源はありませんでした。占領地域はシリアのイドリブ及びその周辺が主体で、「イスラム国」のように広大な領土も石油の産地もなければ、住民から徴収する税金も「イスラム国」ほど豊富ではないでしょう。 そこで、資金難に見舞われた「ヌスラ戦線」が有力な資金源として目を付けたのが、外国人の拉致・身代金奪取という苦肉の策だったと思われます。 2014年7月29日付ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、米国政府による統計では、2008年から2014年までの間にテロリストによる拉致に対して支払われた身代金の総額は1億6500万ドルに上り、そのうちアルカイダと直属のグループが手にしたのは1億2500万ドルだったそうです。アルカイダの資金源の中で、人質の身代金収入は2番目に額の大きい収入になっているとのことです。一方、「イスラム国」は、2014年の1年間だけで2000万から4500万ドルを外国人拉致の身代金として獲得した模様です。ただし「イスラム国」の場合は、期日までに身代金の支払いが確認されないと、人質は容赦なく処刑されてしまいます。