明日東京D先発デビューのマリナーズ菊池雄星に究極の科学的魔球
まだ、キャンプ序盤、野手が合流して間もない頃にクラブハウスでイチローに呼び止められた菊池雄星は、少しやり取りを交わしたあとで、こう尋ねた。 「イチローさん、ボールの握りで、親指を掛けるところがどうも」 菊池は滑るボールとアリゾナの乾燥した気候に手こずり、滑らないような握りを模索しているうちに、親指の位置が分からなくなった。 答えが見えた頃、「聞いてはいましたが、想像以上」と振り返った菊池だが、イチローに相談した頃は、「間に合うのか」と真剣に焦っていたという。 4シームに関しては、それほど苦労しなかった。2月25日のレッズ戦で初先発したときも「真っすぐに関しては、納得いくものが出てきた」と満足げ。ブルペンでもライブBPという打者を相手に投げる練習でも、「いい軌道が出ている」と菊池らしい表現で仕上がりを形容した。 一方で、変化球に関しては実戦に入ってからも、試行錯誤が続いた。 「まだカーブが抜ける。スライダーも決めたい時に抜けて、膨らんでしまう」 特にスライダーに関しては、「真っすぐとともに軸になる球種」(菊池)という位置づけ。ブルペンや試合でもその度に課題としたが、それでも徐々にボールも手に馴染み、オープン戦3度目の先発となった3月7日のレッズ戦で、通算280本塁打のマット・ケンプからスライダーで三振を奪うと、こう手応えを口にした。 「常にあそこに投げきりたいと思ってやっているけど、ちょっと膨らんでしまったりというのがここ2試合続いていた。ああいうボールが常に投げられるようになればいい」 データ的にももう、不安はない。 「あのときとロイヤルズ戦(2日)のスライダーのデータ(軌道)は、日本時代のものとほぼ同じでした」 あとは、チェンジアップーー。 「はい、そっちですね」 菊池はそう言いながら、左手でチェンジアップの握りを作り、手首を前に振った。