「オレ、ちょっと泣きそうになりました」西武池袋本店が「61年ぶりスト」、道行く人々が見せたグッっとくる反応とは
気温はすでに30度を超え、アスファルトの照り返しも厳しかったが、組合員の高揚感がビリビリと伝わってきた。私たち「アベンジャーズ」の6人にもカメラが向けられたが、各労組の委員長たちは誰1人臆することなく、堂々と歩きつづけてくれた。 明治通りを池袋駅方面に進み、駅前の東口五差路交差点まで来ると、後方にストライキで休館中のイケセイ(編集部注/西武池袋本店)が見えてくる。このもっとも写真映えするスポットで、多数のカメラマンが待ち構えていた。マイクを持ったアナウンサーもいる。この場所からデモの様子を中継するということだろう。 サンシャイン60通りを東へ進んで、出発地の公園に戻るまでのあいだ、「頑張れよ!」という応援の声、拍手、写真を撮り、手を振ってくれる大勢の方を目にした。 ひょっとすると石を投げられるかもしれない、罵声を浴びせられるかもしれない――そう思っていたが、ヤジの声ひとつなく、街の人たちはわれわれに好意的に感じられた。 「割石さん、これ」 ハンドマイクでアピールしながら先頭を歩く割石に、信号待ちの際、高島屋労組の役員からそっとペットボトルが手渡される。西嶋委員長の気遣いだった。 その横では、三越伊勢丹の菊池史和委員長がライブでSNS発信している。
● 思いっきり泣け 誰も何も言わないよ 国道254号線に戻り、公園を目の前にして、割石のいつものポーカーフェイスが崩れていた。汗か、涙か、頬に光るものがある。 「オレ、ちょっと泣きそうになりました」 「いいよ泣いて、思いっきり泣け。誰も何も言わないよ」 百貨店業界としては61年ぶりとなるストライキ、デモ行進は、思いがけないほど多くの方のご支持をいただくことができた。ヤジや厳しい批判も予想していたが、むしろありがたいご声援に力をいただいた。 「皆さん、今日は暑いなか本当にありがとうございました。ビラ配りはわれわれで大丈夫ですので」 5労組委員長、役員にお礼を言って、引き上げていただいた。もう1度簡単にメディアの取材を受け、今日の感想などを話したあと、いったん事務所に戻った。 ちょうどそのころ、そごう・西武の本社を訪れていた井阪隆一社長が四谷の本社に戻るため、書籍館南通用口に横づけしていた社長車のアルファードに乗り込むところだった。この日の午前中、四谷のセブン&アイ本社で株式譲渡を決議し、それをそごう・西武に伝えに来ていたのだ。 ● 「ハンカチおじ」とも呼ばれ デモはネット動画でバズる 事務所に戻ってから、手元のスマホを見るとデモ行進中に井阪社長から着信した履歴が残っている。いくらなんでも、そのタイミングでは電話に出られないよな……。