自動車業界、「脱炭素」対応に注力…牛ふん由来のメタンガスで工場稼働・バイオ燃料燃やせるエンジン開発
自動車業界が、生物由来のバイオ資源の活用に力を入れている。交通・物流や自動車生産は二酸化炭素(CO2)の排出量が多く、脱炭素化の対応が待ったなしだ。ふんから発生したメタンガスを工場のエネルギー源として使ったり、バイオ燃料で走る車の開発を進めたりしている。
ダイハツ工業は、牛のふんから発生したメタンガスの有効活用に取り組んでいる。効率的にメタンガスを生成する装置や、メタンガスを用いた発電機を滋賀県竜王町の工場に導入した。メタンガスは、近隣で肥育されているブランド牛「近江牛」のふんを発酵させて発生させる。将来的にはアルミニウムを溶かす工程で、熱源に使っている都市ガスの一部と置き換える。 現在は1日約2トンのふんを集めている。数年後に20トンに増やすことで、工場からのCO2排出量を数%減らす計画を立てている。ふんの残りかすは、近江米の肥料として再利用する。井上雅宏社長は「温暖化対策としてCO2を削減することは自動車メーカーとしての責務だ。環境にも人にも優しい地域貢献を進めたい」と話す。 インドで乗用車のシェア(市場占有率)首位のスズキは、牛の数が多いことに着目し、同国で牛ふんなどに由来するバイオガスの製造プラントを準備中で、来年から順次稼働させる計画だ。
サトウキビやトウモロコシなどに由来するバイオ燃料は、原料の植物が成長過程でCO2を吸収し、燃焼時の排出量と相殺になるとされる。経済産業省は2030年代の早期に、新車のエンジン車すべてをバイオ燃料に対応させるよう、自動車業界に求めている。 トヨタ自動車は5月、バイオ燃料などの利用を視野に入れ、CO2の排出量を大幅に減らす新たなエンジンを開発すると発表。マツダは、発電用エンジンとして一部車種に搭載している「ロータリーエンジン」について、「幅広い燃料を燃やせる」として、バイオ燃料へ対応するための研究を進めている。