『マイダイアリー』言語化できない“好き”の感情 “普通”に溶け込む見上愛の底知れぬ振り幅
“好き”って、この世でいちばん言語化できない感情なのかもしれない。好きな色、好きな食べ物、そして好きな人。「なんで、好きなの?」と聞かれたら、「なんとなく」としか答えられなくて、「いつから好きなの?」と言われても、はっきりとは分からない。とくに、恋愛感情の“好き”ならなおのこと。愛莉(見上愛)のように、「好きってなんなんだろう?」と悩んだ経験がある人もいるのではないだろうか。 【写真】ご飯を食べながら愛莉(見上愛)に微笑む優希(清原果耶) 『マイダイアリー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)第4話は、見上愛演じる愛莉にスポットが当たった回だった。虎之介(望月歩)が「初恋って、いつ? どんな人?」と聞いたとき、優希(清原果耶)たちは「足が速い子が好きだった」などと初恋のエピソードを明かすが、愛莉は頑なに秘密主義を貫き通す。そして、「好きとかそういう言葉、みんなが知ってる前提で使わないで」と虎之介に怒りをぶつけるのだった。 わたし自身も、「初恋って、いつ? どんな人?」という質問を友人にしたことがある。でも、それは世間話のようなノリで、とくに深い意味があるわけではない。ただ、それってみんなが当たり前に初恋を経験したことがある前提の質問だ。愛莉のように恋愛感情が分からない人もいるということを考えていなかった。 愛莉は、“好き”が分からないと言うと、いつも「まだ好きな人と出会っていないだけだよ」と返されてしまうらしい。だから、「好きって気持ちが分からない人間、この世界でわたしだけなのかな」とずっと悩んできた。ただ、愛莉の心のなかには、いつも優希の存在がある。優希を見ていると、「似顔絵を描いてあげたい」と思うのだけれど、それが恋愛としての好きなのか、友情としての好きなのか、いまいちよく分からないようだ。 「好きってさ、磁石みたいなものだから、噛み合えば強く引き合うけど、向ける方向を間違えたら、すべてを崩しちゃうかもみたいな」 愛莉のバイト先の先輩・和沙(SUMIRE)が言っていた言葉が、深い。とくに、愛莉のように友達に恋をしてしまったかもしれない人なら、なおのこと。また、これは男女問わずかもしれないが、“好き”を伝えることで、関係性が一気に崩れてしまう可能性もある。 人は、いつから“好き”を自覚するのだろう。愛莉が「好きなの? 徳永くんのこと。確信を持つときって、どんなとき?」と聞いたとき、優希は「考え中かな。ドキッとして、胸が熱くなる瞬間? 予想外のこと言われたり。この人のなかに、わたしいるんだなとか。わたしを見てくれているんだって実感するようなこと(があったら)」と返していた。好きという感情は、合否が決まるテストじゃない。だからこそ、曖昧な瞬間があるものだ。