太陽系外惑星WASP-49 Abに衛星が存在する可能性 イオのような火山活動が起きている?
こちらは「うさぎ座(兎座)」の方向約635光年先にあるかもしれない太陽系外衛星(系外衛星)の想像図です。その表面では激しい火山活動が起きていて、噴出した物質が雲を形成している可能性があるといいます。 噴火活動の証拠? 木星の衛星イオのように活発な太陽系外衛星が存在か(2019年9月)
太陽系外惑星WASP-49 Abに衛星がある可能性
この太陽系外衛星候補はカリフォルニア工科大学(Caltech)/ジェット推進研究所(JPL)のApurva Ozaさんを筆頭とする研究チームが報告したもので、太陽系外惑星(系外惑星)「WASP-49 Ab」を公転している可能性があります。 2012年に発見が報告されたWASP-49 Abは、質量と直径が太陽に似た恒星「WASP-49 A」の近くを約2.78日周期で公転しています。推定される表面温度(放射平衡温度)は1400ケルビン(約1127℃)で、質量は木星の約0.37倍ですが、直径は木星の約1.12倍に膨張しています。 太陽系外衛星とはその名の通り太陽系の外にある衛星、つまり太陽系外惑星を公転する衛星を指します。地球をはじめ太陽系の惑星には衛星を持つものが多いですから、太陽系外惑星にも衛星を持つものがあるのではないかと考えるのは自然なことです。ただ、太陽系外惑星はこれまでに5700個以上が確認されていますが、太陽系外衛星はいくつかの候補が報告されているのみで、存在が確認されたものはまだありません。
カギはWASP-49 Abで検出されたナトリウムの雲
アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、2017年にWASP-49 Abのすぐ近くにあるナトリウムの雲が初めて検出されています。太陽系外衛星が火山活動を通じてどのように検出されるのかを研究してきたOzaさんは、この雲に注目しました。活発な火山活動が起きていることで知られている木星の衛星イオからはナトリウムをはじめ二酸化硫黄やカリウムなどのガスが絶えず噴出していて、木星の周囲に巨大な雲を形成することがあるからです。 ラ・シヤ天文台の3.6m望遠鏡に設置された分光観測装置「HARPS」やパラナル天文台の「超大型望遠鏡(VLT)」に設置された分光観測装置「ESPRESSO」の観測データを分析した研究チームは、ナトリウムの雲がWASP-49 Abの大気圏よりもかなり上に位置することを突き止めました。これは木星の周囲にイオが形成する雲の特徴と似ています。 また、約2.78日周期で規則的にトランジット(※1)を起こすWASP-49 Abに対して、ナトリウムの雲は一見不規則な周期で惑星や恒星の後ろに隠れたり現れたりするうえに、WASP-49 Abに隣接していない時に雲のサイズが突然大きくなったり、雲の移動速度がWASP-49 Abとは異なっていたりする様子も観測されたといいます。 ※1…ある天体が別の天体の手前を横切るように見える現象。太陽系外惑星が主星の手前を横切ると主星の明るさがわずかに減少するため、その周期や継続時間をもとに太陽系外惑星の公転周期や直径を割り出すことができる。