父は元近鉄WTB 近大和歌山・伊藤が初勝利に貢献 高校ラグビー
◇全国高校ラグビー大会1回戦(28日・東大阪市花園ラグビー場) ◯近大和歌山29―7坂出第一(香川)● 【熱戦を写真で】近大和歌山-坂出第一(1回戦)全国高校ラグビー 父のかつての本拠地で躍動した。近大和歌山はウイング(WTB)伊藤吏雄(りお)の嗅覚が6回目出場のチームに大会初勝利をもたらした。 期待の1年生トライゲッターは「花園1勝を目標にずっとやってきた。『ここしかない』と思ってやりきりました」と誇らしげだった。 見せ場は7点リードの前半17分に訪れた。 相手陣での左中間ラックから左大外でパスを受け取ると、「外にスペースがあったのでトライしか考えていなかった」。右へ左へ細かなステップを切りながら加速して2人のタックラーを振り切り、約40メートルを走ってインゴールへ飛び込んだ。先制トライを含めて10得点し、快勝の原動力となった。 中学時代はバレーボールに力を入れていたが、高校では小学生の頃に親しんだラグビーを選んだ。文武両道を目指して近大和歌山に進学し、毎朝5時半起床で大阪・和泉市の自宅から通学する努力が報われた。 伊藤には活躍を報告したい人がいる。父の真一さんは近鉄(現花園近鉄ライナーズ)でプレーしたWTBだった。 尊敬する父は高校時代に江の川(島根、現石見智翠館)の選手として花園でトライを挙げるなど16強入り。「父を超えられるように頑張りたい」とさらなる目標も抱く。 和歌山勢は過去通算6勝で2回戦を突破したチームは存在せず、全国大会で苦しんできた歴史がある。近畿は全国有数のラグビー熱を誇る一方、和歌山では中学時代に有望な選手がいても隣県に流出し、強化が進まなかった。 1988年創部の近大和歌山も同様の悩みを抱えながら活動してきた。大阪のラグビースクール経験者から入学につなげるなど、試行錯誤する中で和歌山勢としてつかんだ9大会ぶりの勝利だけに、OBの田中大仁監督は「感無量です。うちの勝利で和歌山のラグビーが発展するきっかけになればうれしい」と意義を語る。 30人弱いる選手のうち1、2年生が大半を占める。新たな扉が開かれる日も近いはずだ。【長宗拓弥】