世界的ヒットを生み出すTikTokが持つ“中毒性”「選択のパラドックス」を逆手に取った戦略とは?
選択肢が多すぎて選べないもどかしさ、選べないことのストレスなどを回避するためには、選択肢を少なくする方法の他に、選びやすい環境を作ることが大切だ。 レストランに行ってメニューに迷っていると、店員が「今日のおすすめはサケのムニエルです。サケは今が旬の魚なので、脂が乗っておいしいですよ」など、一押しのメニューを紹介してくれることがある。スーパーでよく見かける、“今日のおすすめ”と書かれたポップも迷っている私たちにとって選択の一助になるだろう。 おすすめのメニューがないと、私たちは数多くのメニューの中から自分に最適だと思うものを選ばなければいけない。選択することにストレスを感じる人もいるだろう。仕方なく思い切って選ぶこともあるだろうし、その結果が期待外れのときもある。 顧客が、あの商品の選択は失敗だった、と思うことは企業にとってマイナスだ。顧客との長期の友好関係を築くために、選択しやすい環境を作って仕組みを整えることは、成功する企業にとって重要なことである。 ■ 行動経済学で考えるTikTokのヒット ――現状維持バイアスや動画を探す負担を軽減して中毒性が倍増 選択肢が多い場合、利用者に何がいいのかを選んでもらうのではなく、はじめから企業サイドでユーザーに適したモノやコトをおすすめするのも一つの方法だ。選択の手間を減らすことで世間に浸透したのが、中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)が運営するTikTok(ティックトック)だ。TikTokは、SNSの中でも短編の動画投稿に特化している。 TikTokの大きな特徴として、アルゴリズムによってユーザーの好みに合うと判断された短編の動画を自動で流すことにある。これによってアプリのユーザー自らがキーワードを設定し、見たい動画を探す負担は軽減できる。アプリ自体があらかじめ心に刺さる可能性が高いコンテンツを自動的に提示し続けるのだ。