米防衛大手の納品遅れ、中国より大きなリスク-エマニュエル駐日大使
(ブルームバーグ): エマニュエル駐日米大使は8日、米国の防衛産業大手は設備投資より株価の向上を優先させており、米国の安全保障と抑止の信頼性にとって「中国より大きなリスクだ」とその経営姿勢を批判した。
ブルームバーグとのインタビューで語った。来週にも約3年にわたる任期を終えるエマニュエル氏は、防衛装備品の納入遅延が米軍や同盟国に与える悪影響を目の当たりにしてきたと指摘。「彼らの失敗を補うために、どれほど政治的資本を費やさなければならなかったか、数えきれないほどだ」と振り返った。
中東やウクライナでの緊張の高まりを受け、ロッキード・マーチンやRTX、ノースロップ・グラマンなどの防衛大手が生産する装備品への需要は拡大している。同盟国などからの需要に対して生産が追いついておらず、他の米政府高官からも、防衛大手が設備投資より自社株買いを優先させていることへの批判の声が相次いでいる。
エマニュエル氏が駐在している日本も2022年に防衛費増額を決定して以来、「有償援助(FMS)」を通じた米国からの装備品購入を増加させている一方、製品が自衛隊に届かない未納入の問題が指摘されている。米国の要請により、日本政府が23年に輸出を認めた三菱重工グループによる地対空ミサイル「パトリオット3(PAC3)」のライセンス生産も、米側からの重要部品の提供の遅れにより、生産計画は未達となっている。
3日に米国務省は中距離空対空ミサイル1200発を、最大36億4000万ドル(約5800億円)規模で日本に売却することを承認。同ミサイルは、航空自衛隊が運用する戦闘機F15やF35から発射できる。この取引は、完了までに数年を要する可能性が高いが、議会の承認が必要だ。
駐日米大使として両国間の交渉に関わってきたエマニュエル氏は、米国製装備品の遅延がもたらすリスクに危機感を示した。契約の期限までに納品できないのなら、解決策として、数年間、自社株買いを禁止することが考えられると述べた。