福島県大熊町の生き物カードに 東京から移住の沖野昇平さん ゲーム開発中、自然を身近に感じて
福島県大熊町の豊かな生き物のことを知らないままに嫌うのはもったいない―。東京都から町に移住した沖野昇平さんは町の生き物を題材にしたカードゲームを開発中だ。町内で見つけた生き物をカードにして特徴を紹介している。100種類を作成した。移住者や町民、子どもたちに町の自然を身近に感じてもらうことを目標に、1万種の生き物のカード化を目指している。 カードゲームの名前は「#くまみっけ」。生き物たちを、それぞれ季節(春夏秋冬)と種類(虫・動物・草木・花)に分類している。季節、種類のどちらかが同じ仲間3枚をそろえて「見っけ」のかけ声とともに場に出す。決まった組数をそろえた人が1位になる。 沖野さんは神奈川県出身。教育系のスタートアップ企業「イン・ザ・ライ」の代表を務める。児童生徒がオンラインで海外の人から異文化を学ぶ特別授業を各地で展開する。義務教育施設「学び舎 ゆめの森」でも実施している縁などで昨年10月、移住した。防災に関するポッドキャストの配信にも取り組んでいる。
4月、町内の自宅の雨戸でガの一種「オナガミズアオ」を発見した。調べると成虫の寿命が1週間と短く、珍しさを知った。名前が明らかになると、楽しみの幅が広がるという実感がカードゲーム作りの根底にある。見知らぬ生き物を気持ち悪いと嫌悪して、安易に殺虫剤や除草剤をまくのではなく、町の環境や生態系をより身近に感じて楽しめるきっかけをつくろうと4月から生き物探しとゲーム作りに励んできた。プログラムは町移住定住支援センターの「おおくまチャレンジ応援プログラム」に採択されている。 8月末、linkる大熊でイベントを開いた。開発中のゲームを披露し、大会を開催したり、周辺の虫取りをしたりした。子どもから大人まで15人が参加した。参加者の子どもから「虫が好きになった」と声をかけられたという。 将来的には商品化を目指しており、町の多様な生き物をさらにアピールするつもりだ。沖野さんは「子どもたちの声が何よりうれしかった。秋冬の生き物を見つけるのが楽しみ」と生き生きと話す。幅広く奥深い大熊町の自然を探求する意欲は尽きない。
(相双版)