2024年「鉄道トラブル」事件簿 輪軸不正や脱線、新幹線の連結分離 大事故には至らなくても信頼揺るがす事態に
脱線や衝突ではないものの、重大な事故にもなりかねないトラブルだったといえるのが、3月6日に発生した山形新幹線「つばさ」のオーバーランだ。郡山駅に到着の際スピードが下がらず、本来の停止位置を約520m行き過ぎて停車した。同駅では2022年にも同様のトラブルが起きている。JRは調査結果で積雪のほか、滑走を検知して車両のブレーキを緩める「滑走制御」により「ブレーキ力の低い状態が長く継続した」ことが原因としている。
■貨物列車脱線から全国に飛び火「輪軸不正」 夏以降、貨物列車の脱線事故も相次いだ。7月には山陽本線の新山口駅で、貨物列車を牽引していた機関車の車輪のうち1軸が脱線。11月には函館本線の森―石倉間の踏切で機関車1両・コンテナ貨車20両の貨物列車のうち貨車5両が脱線する事故が起きた。さらに12月には、鹿児島本線の川内駅で機関車とコンテナ貨車が脱線。この事故の影響で同線の川内―隈之城間は不通が続き、再開は12月31日になる見込みだ。
函館本線の事故はレールの腐食が原因とみられ、鹿児島本線の脱線は現在も調査が続いている。だが、中でも鉄道の信頼を揺るがすこととなったのは、7月の山陽本線の事故から明るみに出た、車両の走行にかかわる「輪軸」組み立て作業時のデータ改ざん問題だろう。 山陽本線新山口駅の事故では、脱線した機関車の輪軸が折れていたことが判明。その調査の過程で、車輪に車軸をはめ込む際に基準値を上回る圧力をかけていたにもかかわらず、基準値内のデータに差し替えて記録するなどの不正がJR貨物の3つの車両所で行われていたことが判明した。
JR貨物でのデータ改ざん発覚を受け、国土交通省は9月、全国の鉄道・軌道事業者に輪軸の緊急点検を指示。その結果、計91の事業者で圧力が規定と異なるなどの「不適切な事案」があり、さらに計50の事業者では記録の改ざんが確認された。 国交省の発表では、改ざんが確認された鉄道事業者の車両でも安全に運転できないものはなかったとしている。ただ、車輪・輪軸という鉄道の走行を支える部分の組み立て作業で、全国的に不正が発覚した事態は重大だ。