異例の自己解説…なぜロッテ鳥谷敬は5か月ぶり”実戦デビュー”で安打&好守で存在感を示すことができたのか?
守だけでなく打でも診せた。 最初の打席は、三邪飛に倒れたが、第二打席は、初球のアウトコースのストレートを狙い打ちした。しかも、打ち損じず一発で仕留めてライナーでレフト線へ弾き返す。 この場面のヒットの理由も鳥谷が自己解説してくれた。 「前のバッターがホームランを打っての場面。あそこは、球種(を狙う)よりも、どんどん振っていこう(という姿勢)が、いい結果につながった」 巨人のローテーを任される予定の戸郷は、3回一死一塁から”育成”の和田に2ランを浴びていた。その直後の打席。戸郷の心理を読めば、本塁打を打たれた失意が、次打者への強気の攻めに変わるはず。通算2085安打の勲章はダテではない。 走攻守の走も、ある意味、注目を集めた。 鳥谷は、この打球で果敢に二塁を狙ったのだ。だが、巨人のレフト、石川にダイレクト返球されて、余裕のタイミングでアウトになった。二塁へ滑り込んだ鳥谷は、ベンチへ戻る際に笑っていた。このボーンヘッドも鳥谷の説明によると、キャンプもせず迎えた実戦の初戦ゆえの計算ずくのプレーだった。 「タイミング的に厳しいのはわかっていたが、自分の感覚と、実際にボールが来たときの時間差と、スライディングしたり……をどんどん試した。キャンプもやっていない、実戦もやっていないので、野手の送球との感覚(を磨くために、そういうプレー)は、どんどんこなさないといけない。無難にこなすのではなく、どんどんいって、これ以上無理とか、自分で感じないといけない。積極的にいきすぎなくらいにやっていきたい」 5回の3打席目はフルカウントから戸郷のアウトコース低めのボールを見逃して三振に倒れた。高卒2年目の巨人のホープ、戸郷を「一流の球界を代表する選手を少しだけど抑えられ、特に最後の三振は自信になった」と感激させた三振だが、この打席も鳥谷にとってみれば意義のある打席だった。 「低いとジャッジして審判がストライクといえばストライク。あれをカットしなければいけないのか、その日の審判によって違うが、ひとつの課題として出てきた」 昨年10月13日のクライマックスシリーズの巨人とのファイナルステージで代打に立って以来、約5か月ぶりの実戦。鳥谷は、「打席でのボールの見え方は、思った以上に(ギャップを)感じなかった。実戦でもできるんだと自分に言い聞かせながらやってきたが、しっかりと体を作った状態でこれたかなと実戦の中で思った」という。 そして、今後の課題を「今日起きたプレーに関しては、自分なりに多少できたかなという思いはあるが、これからミスであったり足りない部分が出てくると思う。その対応、修正をやっていかなくてはいけない。相手ピッチャーや、気候によっても状況が変わる。そこに、どう対応していくか。ストライク、ボールのジャッジ、審判のジャッジとのバランス。試合の中で数をこなして課題を見つける。守備も、実戦の中で左右のボールとか、ランナーとの距離感とか、どんどん数をこなしていくことが必要」と設定した。 メディアが50人ほど詰めかけた注目のロッテの”デビュー戦”で、鳥谷は”自分が何ものであるか”を見せることができた。 初戦でヒットが出てほっとしたか?と聞かれ、鳥谷は「ほっとした、はない」と否定した。 「グラウンドに立って、走ったり、投げたり、打ったりして、体が全然、違うなあ(という感覚)はなかった。その意味では、”ほっとした”はあるかも。ただヒットやいいプレーをして”ほっとする”状況ではない。ひとつひとつ確認の作業の中での一打やプレーだったということ」 マスクをかぶった巨人の炭谷は、最短距離で感じ取った鳥谷をこう評した。 「西武時代の交流戦で対戦したくらいだが、阪神時代と変わらない。狙い球にバットコントロールが良かったし、目(選球眼)がいいですね」 戸郷の勝負球のフォークに手を出してもらえないシーンもあった。 今岡2軍監督も、「練習通りのトリらしい動き。ただ、この1試合でどうこういう選手じゃない。現段階のバッティングをどうだの評論は彼に対してはいらない。ブランクがないというか、きっちり練習してきているなという感じは受ける」と、その動きに二重丸をつけた。