怒れるフランスの「低所得で高学歴の若者たち」 左派復活は「第6共和制」への序曲か
メランション氏(写真)の打ち出す富裕税復活や資産課税にはトマ・ピケティ氏も支持を表明した (C)JB Autissier / Panoramic
フランス政治にはかつて、コアビタシオン(Cohabitation)と呼ばれる一風変わった態様が存在した。「男女の同棲」を意味する、この言葉は大統領と首相が別の党派に所属して、一政権としての体面を保ちつつ、牽制し合う状況を示していた。1958年に始まる第5共和制で過去3回、コアビタシオンに陥った理由は非常にシンプルだ。大統領の任期が7年、首相を事実上決める国民議会(下院)議員の任期が5年とずれていたため、国民の支持動向によっては大統領の政策に反対する野党が下院選を制し、大統領が宿敵を首相に任命せざるを得ない状況に追い込まれたのだ。 2000年、当時の ジャック・シラク 大統領はこの状況に終止符を打つため、憲法を改正した。大統領の任期は、下院議員と同じ5年に短縮され、しかも大統領選(4月~5月)の直後に下院の総選挙(6月)が行われることになった。論理的に考えれば、大統領選を勝ち抜いた党派は、勢いそのまま総選挙も圧勝し、安定政権がつくられる。実際、ここ20年ほどは目論見通りの結果が続いた。変調を来したのは、この6月の総選挙が初めてだ。 6月12日と19日に実施された総選挙の直後、中道保守のサルコジ政権時代に法相を務めたラシダ・ダチ氏はこう嘆いた。「大統領選挙では極右が票を伸ばし、総選挙では極左が躍進した」。この言葉ぐらい、現在のフランスの政治状況を言い当てているものはない。 エマニュエル・マクロン 大統領の再選、総選挙での第1党維持の陰で進んでいるのは、極右と極左が、中道を掲げる現政権を脅かす姿だ。
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