がんばりすぎて疲れてしまう前に 「ささやかなもの」に目を向けてみよう
気軽に始められる趣味の世界 「ハイク」効果とは?
1年半前、フランスで“L’effet Haiku”『ハイク効果』という本が出版されました。「ハイク」とは「俳句」のことです(フランス語はHは発音しませんので、実際の発音は「アイク」になります)。※ ※注 “L’effet Haiku”のiは、上の「・」が2つつきます。 俳句は20世紀の初頭にヨーロッパでも紹介され、今では多くの素人の愛好家がいます。3行、17音節というごく短い定型詩であることが、たくさんのアマチュアを引きつける理由です。短いから生活の一場面を切り取るだけで作品になります。全体の構成などを考えなくても手軽に作れます。しかも形が決まっているから、五七五の音節を整えればそれらしい「作品」になる。この手軽さが素人にはありがたいのです。 この本ではさまざまなハイク効果が説明されています。いくつかキーワードを拾って紹介してみましょう。 “reculer(後退する、身を退く) se decentrer du probleme(問題から距離を置く)” ※ ※注 「decentrer」dのあとのeと、「probleme」のlのあとのeの上には 「 ’ 」(アクサン)がつきます。 「一つの問題に囚われて視野狭窄に陥っているとき(いわゆる「ドツボにはまっている」とき)、そんな自分の状況を俳句に読もうとすることで、そこから一歩引いて自分を客観的に、冷静に観察するゆとりが生まれる」 あるいは、 “ne laisser passer la vie(人生を流れるに任せない) regarder la vie autrement(人生を別な視点から眺める)” 「何気ない生活の一場面を切り取って短い詩に表現することで、いまこの時がかけがえのない価値あるものに変貌する。あるいは「平凡」の一言で片付けられそうな人生の出来事に俳句という表現を与えることで、深い価値を感じ取れるようになる」 わたしは俳句に関わる団体のまわし者ではありませんが、俳句は言葉を素材とする点で、楽器の演奏や絵画などより、多くの人にとってハードルが低いでしょう。特別な仕掛けも道具も要らずどこでも実践できます。そして、生活のさりげない瞬間を短い言葉で表現しようとすることで、感性とゆとりを生むきっかけになる、と期待していいと思います。