入山章栄氏が就活生に指南する、これから40年間「ときめいてワクワクする」仕事と会社の選び方
● 自分の中に多様性をつくる ――どういう会社がいいですか。 他がどこもやっていないような面白そうなことをやっている会社がいいですね。そこで1年間働いて、気分が上がらなければ転職すればいい。仮に会社がつぶれても、次を探せばいい。全く問題ありません。 超売り手市場なので行くところはいくらでもある。大企業で高給をもらって働くよりも、例えばスタートアップでレアな経験を積んだ方がよほど価値がある。 これからのビジネスパーソンの能力として最も重要なのは、意思決定力です。なぜなら、あらゆる頭脳労働はAIに取られてしまいますが、意思決定だけはAIにはできないからです。AIに何を言われても、決めるのは人間です。この能力を付けるためには、とにかく意思決定をたくさん経験するしかない。 しかし、日本の大企業では40代くらいまで決裁権がなく、自分で決める機会がないのです。今日の日本の大企業の大問題は社長候補がいないことです。なぜか。意思決定力を備えた人が育っていないのです。 必要なのは、場数を踏むこと。スタートアップで経営層にいると毎日3回は意思決定をしなければいけないので、1年に1000回以上意思決定することになる。一方、大企業はゼロ。10年経つと圧倒的な能力の差になる。だから大企業に入ってはダメなんです。 スタートアップでなくても、中小企業には能力を伸ばす機会があります。伝統的な中小企業でも、後継者の若手社長が新しいことにチャレンジしていたり、いろいろな会社と組んだり、多様な人材を採用したりするなど、面白い会社はたくさん出てきている。 そうした多様性のある企業ではイノベーションが起きやすいので、自らの能力を磨く場として就職先の狙い目です。 ――多様性のある組織に行くことは重要ですか。 もちろんです。多様性はイノベーションの源泉ですから、いろんな人がいる会社の方が絶対に面白い。多様性にはもう一つあって、私は個人内多様性と呼んでいますが、自分の中に多様性をつくることです。 就職した後、会社や業界や職種を変えたり、たまには働かなかったりして自分自身で多様な経験を選んで積む。それが可能な時代になった。今後さらに兼業も許されるようになっていくので、同時期に異なる企業で働くことによっても、個人内多様性を広げていけます。 *後編は12月12日に公開予定です。
嶺 竜一