中国経済「本当の苦境」が日本企業の厳しい決算からわかった…「トランプ時代」到来でさらなるダメージも
トランプ次期政権が与えうる「深刻なダメージ」
本稿で採り上げたのは以上のような会社になる。自動車、化粧品、ピアノ、住設機器、このうち住設機器は不動産市況の低迷に直接的な影響を受けているのだろうが、ピアノや化粧品(特に化粧品)は中国の消費者が節約に本格的に入っていることを強く物語る。また、資本財についても、国策の影響でなお需要の強い半導体製造装置などを除けば、過剰投資の反動や補助金の打ち切りや縮小などの影響を受けて、中国市場で苦しむ日本企業が多いことは、様々な経済記事が伝える通りだ。 繰り返しになるが、様々な業態の日本企業の決算が伝える中国経済や中国の現状には操作できない真実が宿っている。自社の視野でだけモノを考えるのではなく、また、公式に発表される数字だけを追うのではなく、こうした機会に決算数字という言語に映し出された現象を追いかけてみるのは意義深いのではないか。 さて、最後になるが、冒頭に触れたように(3選はできないので)2025年1月からトランプ氏の最後の4年が始まろうとしている。何が起こるのか、何をするのか、それは或る意味市場が動くという意味で楽しみでもあるが、例えば氏が掲げてみせた中国製品に対する関税60%への引き上げなどが現実のものとなった場合、その政策が中国経済に与える影響は深刻なものになる。逆にそれは国民の意識を悲願の台湾統一という行動に向け扇動する要素になるかもしれないので、そうしたシナリオもまた現実のものとして経営者や投資家は(いや、我々は)考える必要もあるだろうが、その意味でも、これから先、中国にどう対峙するのか、を深く考えるときが来ている。 また、それは第二次大戦後、世界を束ねていた自由と民主主義、開かれた世界、がもたらした先進国の内なる格差が行き着くところまで来て、むしろ国境を閉ざすことを願う層が生み出したトランプ現象を前に、開かれた世界で一定の繁栄を得て、かつ、権威主義を生理的にうけつけないだろう我々が(本当にそうかは別にして)何をなすべきなのか、も問いかけている。
三ツ谷 誠(IR評論家)