中国経済「本当の苦境」が日本企業の厳しい決算からわかった…「トランプ時代」到来でさらなるダメージも
中国人の消費低迷で資生堂は大幅減益
我が国にも懐疑的な視点で中国当局の発表を眺め、別な機関からそれぞれ公的に発表される数字を突合せ、矛盾点を指摘する論者は、朝香豊氏をはじめ存在する。 それとはまた別の方法論にはなるが、中国当局の関与や操作ができないという意味で、日本の中国進出企業の決算報告から中国事業の現状を追い、そこから中国経済の現状を推察することには意味がある。何故なら、そこには当局が糊塗しきれなかった生々しい実態が横たわっている筈だからだ。 その意味で例えば注目すべきは、11月7日に発表された資生堂の2024年12月期第3四半期の決算発表になるだろう。そこで資生堂は中国事業と中国人の旅行者を主たる顧客とするトラベルリテール部門(空港などでの免税店でのリテール)の低迷から通期の連結営業利益予想を当初220億円から60億円に72.7%下方修正した(前期比では72.4%の減益)。また、3Qの累計で言えば、営業利益は21憶83百万円で、これは前年同期比で-91.5%の水準という落ち込みになっている。率直にかなり激しい落ち込みだ。 図2は、資生堂が11月7日決算発表当日開催した決算説明会の資料の、2024年12月期第3四半期決算のポイントを説明したスライドになるが、トラベルリテール・中国には、「3Qは想定以上の中国人の消費低下により減収幅拡大」の記載がある。資生堂のフォロワーであれば、中国市場が、日本市場と同じ規模を持つ重要な市場であることは自明のことだろう。その柱である中国の不振は、そのまま資生堂の業績に大きな影響を与える。
業態問わず「さらなる減速」に襲われている
想定以上の落ち込み、という表現で言えば、楽器のヤマハの決算関連資料にもそれに類する表現がある。ヤマハは11月1日に2025年3月期第2四半期の決算を発表したが、同日に通期予想を修正、営業利益で言えば、当初445億円予想を270億円にと引き下げた。その理由の大きなものとして「ピアノをはじめとした中国市場のさらなる減速の織り込み」を挙げている。 図3は、ヤマハが同日に行った決算説明会資料の抜粋、地域別販売状況になるが、4つの地域に分けられたデータで、日本が2023年3月期対比2025年3月期予想が98%、北米が95%、その他が103%とほぼ横ばいを見込んでいるのに対して、中国のそれは64%と落ち込んでいる。しかも対前期82%と持ちこたえていた2024年3月期の実績値から一気に18ポイントも落ち込んでいる。まさに「さらなる減速」という表現そのままだ。 このような減速に直面しているのは、ヤマハだけではない。 例えば他にも住設機器、ウォシュレットのTOTOも10月28日、2025年3月期第2四半期決算の発表と共に、中国大陸事業の不振から通期業績について売上高を7,500億円から7,300億円に、当期利益を375億円から360億円に修正している。 図4はTOTOの2025年3月期第2四半期決算説明資料から海外住設事業の地域別の業績が示されたスライドになるが、米州、アジア、欧州が計画比、米州105%、アジア103%、欧州104%と計画を上回ったのに対し、中国は92%と計画を下回っている。 他にも文具・家具のコクヨなども中国市場での苦戦を決算発表で伝えている。