ヴィンテージ古着の価格が高騰中「相場を動かすのは芸能人」のカラクリ 6年間で1000万円になったデニムも
■6年間で100万円→1000万に ヴィンテージ古着の価格事情
そんなヴィンテージ古着の価格について、野原さんは「ここ数年は上がり続けている」という。 「現在作っているものではないので、単純に数に限りがあり、流通する物自体が減ってきます。そうしたなか、元々のヴィンテージ好きに加えて買う人が増えると、どうしても需要と供給のバランスで高騰するという事情はあると思います」(野原さん) 古着の価格は“年代”と“状態”と“希少”さで決まるが、人気が広がれば当然その価値は上がり、価格も急騰し続けるというわけだ。 「同じスウェットでも何のプリントが入ってるかによって値段は変わります。たとえば、チャンピオンの名作スウェット『リバースウィーブ』は今も作られているものですが、ミリタリープリントは高値がつきます」(前同) 同店で取材時に売られていた、90年代の『リバースウィーブ』USAFA(米空軍士官学校)プリントスウェットは、税抜12万8千円だった。 またベルベルジンはヴィンテージデニムの豊富な取り扱いで知られ、数百万円、なかには1000万円を超えるものもあり、レアアイテムが入荷すればオープン前に行列ができることもあるという。デニムは基本的に「デッドストック(未使用の状態で長期間保存されていたもの)にどれだけ近いか」で価値が決まるが、野原さんが、その高騰ぶりを振り返る。 「1940年代に作られたデニムで7年前に100万円だったものが、昨年は1000万円になっていました。ほかにも、1922年モデルでワンウォッシュ(一度だけ洗ったもの)が現在1300万円。5年前なら500万円ですね。3年後には1500万円になると思います」(同)
■バンドTに「100万円」!?5年で10倍になる背景は
また、ヴィンテージ古着といえば「ヴィンテージTシャツ」も熱視線を浴びている。音楽や映画、アニメなどのジャンルがあるが、とりわけ「ロックT」「バンドT」などと呼ばれる音楽バンド系のTシャツは人気で、なかでも「ニルヴァーナ」の高騰ぶりは有名だ。 87年に結成し、90年代初頭にブームとなった「ニルヴァーナ」。91年発売のアルバム「ネヴァーマインド」が全世界で3000万枚を売り上げるなど人気絶頂のなか、ボーカルのカート・コバーンが94年に27歳で急逝、解散したという伝説的バンドである。 「ベルベルジン」系列のヴィンテージTシャツ専門店「ベルベルジンYuhodo」の副店長・岡部さんが、バンドT人気は「2010年代ぐらいからじわじわ上がってきた」と振り返る。 「海外のアーティストやセレブ、スター、ファッションデザイナーといった人たちがバンドTを着用する流れがあるなかで、ニルヴァーナはその希少性とジャスティンビーバーら著名人の着用もあり、世界的に値段が上がってきている状態です。今までTシャツは相当な古着好きの一ジャンルでしたが、全体の裾野が広がりました」(岡部さん) 相場が上がる理由には、人気者の着用やメディアへの露出が大きいことがうかがえるが、日本でもそうした古着好きを公言する芸能人は多い。それでは、こと日本市場においても彼らの影響はあるのか。 「そもそも古着の値付けは店によって変わってくるものです。今はYouTubeやインスタなどもあり、“あの店、あれをいくらで売ったらしい”という情報が業界内で出回ると、次はそれよりも高い値段がつけられますよね。そういう意味では芸能人やSNSの影響は大きいですし、相場にも関係してくると思います」(前同) そんな同店で最近売れた“高額”バンドTはというと、岡部さんによればアメリカのロックバンド「ダイナソーJr.」のTシャツで、50万円のもの。業者界隈には、自店なら100万円で売る――という噂もあったそうだが、仮にそれが100万円で売れていたら、次に値付けをする人は100万円よりも高い価格を設定する。そうしてどんどん高騰するということなのだ。 岡部さんは、そんな「ダイナソーJr.」のTシャツについて「5年前なら同じ商品が5万円ぐらいだったのでは」と話す。Tシャツだって、5年前から10倍の価格で取引されるとは想像だにしなかっただろう。
ピンズバNEWS編集部