ITは「利用者が物事を変えていく手段」に 地域のデジタル変革を推進している「日本最高峰のDXプレーヤー」は誰だ
子どもの遅刻や欠席の連絡、学校のプリント配布をLINEで完結
次に、LINEヤフーで事業開発をしている宮本裕樹さんは、「LINE」アプリを使った事例を紹介。 「私は今、LINEの公式アカウントで、公立の小中学校向けに学校と保護者が連絡できるDXソリューションを作っています。 例えば、お子さんが遅刻するという連絡は、わざわざ学校に電話しなくてもチャットで済みますよね。そうした連絡をLINEに置き換えたり、学校のプリント配布をLINEにPDFで送ったりすることができる仕組みです。 このDXは、保護者も学校の先生もすごく負荷が減ったと、ご好評をいただいています」(宮本さん)
学校と連携して大学野球リーグを配信
スポーツナビの代表・小用圭一さんは、次のようなDXを展開しています。 「当社はさまざまなスポーツを配信していますが、昨年は、高校野球を1回戦からあますことなくライブ配信することができました。ただ、その裏では、全試合配信したことで、すごくお金がかかってしまった。 そこで、データの入力方法を工夫することに。通常、中継に関わる部分はデータを集める必要がありますが、我々がツールを作った上で、データの入力部分を学校の先生に担ってもらうことにしたんです。 今そのモデルがすごく発展して、全国26リーグある大学野球リーグは、中継制作やナレーションを大学生が担ってくれています。私たちとしては、機械を提供した上で、地域の力や盛り上がりを借りているということになります」(小用さん)
こうした官民連携、産学連携の事例が増えていく一方で、まだまだその必要性に気づいていない企業、自治体、学校は少なくありません。 鷲見さんは、「まずは、DXの必要性に気づくことが大切。その上で、新しいものを生み出すだけじゃなく、先行事例をなぞらえることも視野に入れてほしい」と話します。 その点、LINEは全国的に普及しているため導入しやすい面はあるものの、宮本さんは、「ちゃんと時間をかけて理解してもらい、丁寧に進めていかないといけない」と慎重な姿勢を見せました。 小用さんも、こう続けます。 「先ほどの高校野球の事例も、私たちがツールを用意したからといってすぐに協力してもらえたわけではありません。一件ずつ説得を重ね、『今年は見送るわ』と断られ続け、4~5年かけて実現しました。 結局、『導入するのが当たり前だ』という空気を醸成し、導入することでどんなメリットがあるかを体感してもらわなければDXの実現は難しい。一番の肝は、現場の方々の脳みそをDXできるかどうか、ということかもしれません」
JAPAN DX Player AWARDとは 産業界、学校、官公庁、民間、環境、スポーツなど様々なジャンルで地域のデジタル変革を推進している日本最高峰のDXプレイヤーを称える祭典。47都道府県で選抜されたノミネートプロジェクトを各部門で選出する。 図版・写真:JAPAN DX Player AWARD 2024事務局 バナーイラスト:Ketut Agus Suardika / gettyimages デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio) 編集:奈良岡崇子