ビッグマックは日本で480円、では世界一高い国では…小学生でもわかる「日本経済の本当の立ち位置」
■世界で日本人の労働価値が低く評価されている 復習すると、日本のビッグマックの価格がアメリカよりも大幅に安くなっているのは、2つのことが影響している。 1.アメリカのビッグマックの米ドル価格の上昇率が、日本のビッグマックの円価格の上昇率より大幅に大きいこと 2.円が対米ドルで大幅に安くなっていること つまり、アメリカでは、ビッグマック1つを買うのに、より多くの米ドルを必要とするようになっているのに、それに加えて、その米ドルと交換するのにより多くの円を必要とするようになっているということだ。 モノやサービスの「価格」が上昇するということは、お金の『価値』が下落していることを意味する。逆にモノやサービスの「価格(値段)」が下落するということは、お金の『価値』が上昇している。 だから、アメリカでビッグマックの米ドル建ての価格が日本よりも大きく上昇しているということは、それぞれの国で別々に考えると、ビッグマックに対して円よりも米ドルの価値の方がより大きく下落していることを意味している。 だから、普通に考えれば米ドルに対して円の価値が上昇しているはずなのに、実際には米ドルに対して円は下落して、大幅に円安が進んでいる。その結果、円で海外のビッグマックを買う時により多くの円を必要とするようになっている。つまり、海外のビッグマックに対する円の価値が大幅に下がっているということになる。 日本国内の閉じた世界では、円の価値はさほど下がっていないのに、国際的に見ると、円の価値が大幅に下がっているということになる。そして、それは円でお給料をもらっている我々の労働の価値が世界の中で低く評価されていることも意味する。 ---------- 佐々木 融(ささき・とおる) ふくおかフィナンシャルグループ チーフストラテジスト 1992年上智大学外国語学部英語学科卒業後、日本銀行入行。調査統計局、札幌支店を経て1994年から1997年まで国際局(当時)為替課に配属。市場調査・分析の他、為替市場介入も担当。その後考査局を経て、2000年7月よりニューヨーク事務所に配属され、NY連邦準備銀行等、米国当局と情報交換を行いつつ、外国為替市場を含めたNY市場全般の情報収集・調査・分析を担当。2003年4月、JPモルガン・チェース銀行にチーフFXストラテジストとして入行。2009年6月債券為替調査部長、2010年5月マネジング・ディレクター、2015年6月市場調査本部長。20年以上にわたってJPモルガンの世界全体のオフィシャルな円相場予想作成の責任者を務める。2023年12月より現職。2024年3月、財務省「国際収支に関する懇談会」委員。著書に『弱い日本の強い円』(日本経済新聞社)『インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?』(ダイヤモンド社)がある。 ----------
ふくおかフィナンシャルグループ チーフストラテジスト 佐々木 融