トランプの米朝会談「行き当たりばったり」外交か「ビッグディール」実現か
アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による「米朝首脳会談」がシンガポールで現地時間6月12日午前9時(日本時間同10時)から、いよいよ行われる。先月24日には、北朝鮮の攻撃的な態度に対し、トランプ大統領が首脳会談の中止を伝える書簡を北朝鮮側に送り、会談そのものが見送られる公算が強まった。しかし、そこから北朝鮮は態度を一気に軟化。これに応える形で、アメリカも会談の実施に向けて再び動き出し、当初の予定通り12日にシンガポールで米朝首脳が膝を突き合わせる運びとなった。 【写真】北朝鮮の「核放棄」裏切りの歴史 アメリカと北朝鮮、それぞれが異なる思惑を抱えるが、大統領に就任してから外交面で大きな成功体験のないトランプ大統領にとっては、何としても「ディールを勝ち取る必要がある」重要な会談となる。強引な通商・外交政策が原因で、先日カナダで開かれた主要7か国首脳会議(G7サミット)では四面楚歌の状態に置かれたアメリカにとって、この歴史的な会談は起死回生の一打となるのだろうか。
前夜の正恩氏は植物園訪問、自撮り写真も
歴史的な米朝首脳会談の開催まで12時間を切った11日夜、金正恩委員長は妹の金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長や側近らを引き連れて、シンガポールの有名ホテル「マリーナ・ベイ・サンズ」に隣接する植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」を訪れている。植物園の滞在は1時間弱であったが、ホスト役として植物園を案内したシンガポールのバラクリシュナン外相との自撮りにも気さくに応じ、非常にレアな「金正恩のセルフィー」写真は、バラクリシュナン外相のツイートを通じて世界中に拡散された。 会談前夜に植物園を訪問し、報道陣の前でソフトなイメージをアピールした金正恩委員長。しかし、アメリカと北朝鮮の実務者レベルでの協議は11日も終わることなく続いた。シンガポール入りしているポンペオ米国務長官は同日午後の記者会見で、米朝首脳会談の成功を楽観視しているとの見解を示した。ポンペオ長官は従来のアメリカ政府の主張を変えることなく、北朝鮮の「完全で検証可能かつ、不可逆的な非核化」(CVID=Complete, Verifiable, and Irreversible Dismantlement)が交渉の基本ラインであると主張したが、同時にアメリカが金正恩体制の維持に「前例の無いレベルでの保証」を用意していることも示唆している。