プレミア12日本戦の3ランが生んだ熱狂 逆境の台湾が見せたプライド
野球の国際大会「プレミア12」は24日の決勝で日本を破った台湾の初優勝で幕を閉じた。台湾では凱旋(がいせん)した選手らをたたえるパレードが台北市で開かれ、頼清徳総統が総統府で選手らと応援歌を歌うなど、想像以上の熱狂ぶりだ。外交やスポーツで「台湾」のアイデンティティーの表現が制限される中、逆境をはねのけてみせたプライドの表れといえそうだ。 【写真で見る】プレミア12決勝 日本-台湾 台湾社会の盛り上がりは、優勝から数日たっても途絶えることはない。元々野球が人気の土地柄で、主要な国際大会では1992年のバルセロナ・オリンピックの銀メダルを上回る最高の成績。26日に行われた祝賀パレードに駆けつけた黄嘉清さん(72)は金色の紙吹雪が舞う中、「死ぬまでに優勝なんてないと思っていた。台湾の姿を最高の形で見せてくれた」と破顔した。各地で祝賀セールや食べ物の振る舞いも行われた。 そんな中、日本との決勝で生まれ、台湾人に広まったポーズがある。 五回に3ランを放った主将の陳傑憲外野手は三塁を回る際、両手の親指と人さし指を開き、ユニホームの胸部分にあてて雄たけびをあげた。4―0。安定した投手陣を誇る台湾に勝利を呼び込む一打だった。 陳選手が示したのは他チームでは「JAPAN」など国名が記された部分。だが台湾のユニホームには登録名の「チャイニーズ・タイペイ(中華台北)」を表すマークが左側にあるだけだ。陳選手はポーズの意図を問う報道陣に対し、「私たちは台湾の誇りだ。台湾から来た選手だと伝えたかった」と説明した。 選手らは26日、総統府も訪問。頼氏らと胸部分に「Taiwan」と記された、そろいのパーカ姿であのポーズを取り、写真に納まった。 五輪をはじめ国際大会のほとんどで台湾は正式な国号とする「中華民国」や「台湾」を名乗ることができない。台湾を自国の一部と見なす中国との交渉の末に編み出された「中華台北」名で長年戦ってきた。 今夏のパリ五輪では試合会場で「台湾」と書かれた応援グッズが没収されるトラブルが相次いで発生。自らを中国人ではなく、台湾人だと考える人が多数を占める中で不満が高まっていた。 台湾メディアの記者は「大舞台での豪快な本塁打とあのポーズは、積もり積もった鬱憤を存分に晴らしてくれた。野球にとどまらず、我々の自信をさらに高める勝利になるかもしれない」と話した。【台北・林哲平】