草刈麻有さんインタビュー「自分と向き合ったら、家族との向き合い方も変わった」約2年ぶりに芸能活動再開!
今秋、2年ぶりに芸能活動の再開を発表した草刈麻有さん。31歳のいま思うことを、じっくりとBAILAだけに語ってくれたインタビュー。 草刈麻有さん「ストレスから解放され1年間でストンと7キロ減量」(写真)
【草刈麻有さんインタビュー】自らつくった“キャリアの転機”
10代でモデル・俳優としてキャリアをスタートした草刈麻有さん。ハッピーな笑顔と存在感のある演技で知られていた彼女が、30歳を前に「休むこと」を選んだ理由とは? お休みの間に起きた心の変化や、今の気持ち、これから大切にしていきたいことを、笑顔で語ってくれた。 ■10代でデビュー。“親ありきの自分”が苦しかった 父(俳優の草刈正雄さん)が芸能のお仕事をしているので、小さい頃から現場に遊びに行かせてもらっているうちに自然と興味を持つようになり、デビューしたのが13歳の頃。 中学生になると、たまたま親友がモデルの仕事を始めたこともあって、“私もモデルの仕事をやってみたいな”と思うようになりました。可愛い洋服を着たいという本当に単純な理由だったんですけど、2009年、中学3年生のときに雑誌『Seventeen』の専属モデルになることができたんです。 当時の『Seventeen』はモデルごとに、ギャル系、とか、原宿系、とか、それぞれが担当するファッションやカルチャーのカテゴリーみたいなものがあったんですけど、私の担当は“海外っぽいアメカジ系”。 私自身興味があることにマッチするキャラクターを作っていただいて今もすごく感謝しているし、“大好きな学校がふたつある”みたいな、期待していたとおりの3年間を過ごすことができて本当に楽しかったです。 高校卒業と同時に『Seventeen』も卒業したあとは、進学はせず、俳優のお仕事に絞って活動していました。 10代でなんとなく興味を持ってなんとなく飛び込んだ世界だったのに、早い段階でドラマ『3年B組金八先生』に出演したり、『Seventeen』の専属モデルが決まったりと、普通の子に比べたらトントン話が決まっていき、それはやっぱり父の名前もあるからということは当時から正直わかっていました。“二世”で、“親ありきの私”であることがコンプレックスだったし、反抗心を抱いた時期も長かったです。 それでもスタッフの方や事務所の方が考えてくれた道筋に疑問を持つことなく仕事に向き合っていたんですけど、気づいたら自分のパーソナリティも、何に興味があるのかということもよくわからなくて、ふわふわしているだけの私だなと思っちゃったんです。それが特に明確になったのが、30歳になる手前でした。30歳といえば多くの方が仕事の転機や結婚、出産などライフステージが変わるタイミングでもありますよね。それに比べて私は、軸がないまま。イメージしていた“大人の30歳”とは程遠くて、このままじゃダメだと思った。十何年も自分自身と向き合ってこなかったことを後悔したんです。 自分自身と向き合うことって、本当に辛いし、すごくエネルギーを使います。それでも、30歳を迎える前に、自分の価値観や人生で大切にしたいことをしっかりと見極めたいと思いました。そうしないと、自分らしく力強く人生を歩むことはできないんじゃないかって感じたんです。それで、私自身が変われたと思えるまで、一旦芸能活動から離れる決心をしたんです。 ■自分自身を探し続けた2年間のお休みで、ポジティブなマインドを持てた お休み中は、視野を広げるためにたくさん海外を訪れて英語の勉強に励みました。いつかグローバルに活躍したいという思いがあったので、海外で少しずつオーディションに挑戦することもしていました。以前は苦手だった読書にも目覚めて、自己啓発に関する本をたくさん読みました。それがかなり私のマインドの変化に影響をもたらしたと思います。 新しい考え方や発想がすんなりと入ってくるようになったし、自分自身の過去を掘り下げて、もっともっと自分を知りたいと思うようになったんです。これまで自分と向き合うのが苦手だったのは、結局、自分に自信がなかったからだと気づかされ、それを認めることができました。 ギアを変えるきっかけになったのは、その当時していた遠距離恋愛がうまくいかなくなったことも大きかったと思います。どうすればいいのか、どうすべきなのかを模索する中で、“手放す勇気”が必要なんだと気づき、生活を変えたいと思うようになったんです。 それまでは彼の価値観に自分を委ねることで安心感を得ていました。それが心地よくて、変化のない日々を過ごすことで、本当はきちんと向き合わなきゃいけない仕事のこと、自分の将来については目をつぶりたかったんだと思うんです。“私って家事も好きだし、ハウスワイフ向きなのかも”なんて考えていた時期も正直ありました。でも、お休み中にたくさんの知識や経験を積む中で、“新しい自分”みたいなものが芽生えた気がしたんです。その結果、自立することができただけでなく、自分の考えや思いを表に出す勇気を持てるようになったんです。 “これおもしろいな。よし! 続けてみよう”っていう感じで、あらゆることに興味を持つようになったら自然と苦手だったことを克服できて、何をやっても三日坊主だった私がコツコツと物事を続けられるようにもなりました。たとえば、毎日お風呂にゆっくりつかって汗をかこうとか、そういう小さなことから始めました。 そういう小さな変化を重ねることで少しずつ自分を信じられるようになって、新しいことにもチャレンジしたいと思うようになりました。ストレスから解放されたからなのか、1年間でストンと7キロくらい体重も減りました。前は“瘦せなきゃいけない、だけど痩せられない”って思ってばっかりで、なかなか実現できずにいたのが嘘みたいでした。 短所も含めて人それぞれ個性があるし、得意不得意があるものだと気づけたことで、今では自分ができることをもっと伸ばそうと思うし、できなかったことはそれはそれで受け入れて、未熟な部分も私らしいと思える。人と比べることも気にならなくなって、“自信があります!”と、堂々と言えるようになったことには自分でも驚いています。 2年間お休みをもらって、お仕事に復帰したのは本当に最近のこと。今は、以前とはまったく違う自分でいられることがすごく嬉しいんです。 親の七光りと言われることに対しては、以前は複雑な思いがありましたが、今は父の娘として生まれたことを、こうして自分が周囲に発信できる立場にいるひとつのきっかけとして感謝しようと考えるようになったんです。 私と同じように30歳前後特有の悩みを持っている方に、私の経験をお話しすることで、悩みをポジティブなエネルギーに変換するお手伝いができたらと考えています。 ■私を支える家族とのオープンマインドなコミュニケーション マインドが変わったら、家族とのコミュニケーションも以前より大切に思えるようになりました。これまで当たり前のように一緒に過ごしてきた家族に対して、改めて“思いをきちんと伝えること”の大切さを感じたんです。 たとえば以前は、おつきあいする相手は“こういう人で、こうあるべき”という固定観念を持っていて、それを両親も当然望んでいると思い込んでいました。でもそれは勝手な私の妄想で、両親はそんなことは気にしていませんでした(笑)。 そういうこともコミュニケーションをしっかりとらないとわからないことですよね。うちの両親はいま70代ですが、“世代が違う私の考えを伝えたところで分かり合えないのでは”というあきらめみたいなものや、 “いい娘でいなきゃ”という気持ちも潜在的にあったかもしれません。まずはたくさん話をして心の内を伝えることを大事にするようになったら、両親もいろいろなことを話してくれるようになり、お互いの距離がぐっと縮まりました。 実家に帰ったときは母と姉(紅蘭さん)と一緒にお酒を飲んだり、母とは買い物に一緒に行くこともあります。父とは共通の趣味のテニスをやりながら、お互いの近況報告を。スポーツをしているときって心もヘルシーだから、深い話ができる気がします。 母やお姉ちゃんとは昔から友達みたいな関係でしたが、父についてはどうしても頑固なところばかりが目についてしまって“わかってくれないからいい”とシェアすること自体をあきらめていた時期がありました。そうやって頑固だと思っていた父が私の話に興味を持ってくれるようになったのは、きっと私の接し方が変わったからだと思うんです。 自分から率先して話すようになったら、父も自身のことをたくさん話してくれるようになり、“ごはんはちゃんと食べているか”、“ちょっと痩せたな”と、人一倍心配してくれるのもいつもパパ(笑)。最近では“人間同士”、“大人同士”という感じの話ができて嬉しいし楽しいです。私の再始動もとても喜んでいて応援してくれています。 今年31歳になって、結婚して家族をもちたいという思いもありますが、今まずは俳優“草刈麻有”としてお仕事で世の中に何かを残したい、貢献したいという気持ちが強くあります。 いろんな人の人生を演じることができるお芝居の仕事が好きだし楽しくて仕方ないので、国内の作品はもちろんのこと海外の作品にも積極的に携わっていきたいです。また、ファッションやメイクにも興味があるので、そういったお仕事にも力を入れていきたいです。お仕事もプライベートもどちらも自分らしさを大切にして、今ある当たり前に感謝して、前向きで豊かな日々を過ごしていけたら、それが私にとっての理想的な生き方です。 草刈麻有 くさかりまゆう●1993年4月20日生まれ。31歳、東京都出身。13歳でデビュー。ドラマ『3年B組金八先生』、映画『書道ガールズ 青い青い空』その他舞台やCMなどに出演し、若手俳優として話題に。2009年より3年間、雑誌『Seventeen』の専属モデルを務める。2024年9月、2年間の休止期間を経て芸能活動を再開した。父は俳優の草刈正雄さん、母は元モデルの大塚悦子さん、姉はタレント・実業家の紅蘭さん。 撮影/橋本紗良 ヘア&メイク/山田千尋 取材・文/通山奈津子