元検事正「これでお前も俺の女だ」「表沙汰にすれば自死」 女性をレイプする上司を守る「組織」の闇 北原みのり
作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は大阪地検で起こった性暴力事件の初公判について。 【写真】初公判を終えて会見で話す、被害を受けた女性検事 * * * 衝撃的な記者会見だった。 大阪地検検事正だった北川健太郎被告が2018年に起こしたとされる性暴力事件で、被害者の女性検事が初公判後に記者会見を開いた。元検事正は今年6月に逮捕されていたが、容疑の詳細は明らかになってはいなかった。記者会見では、「関西検察のエース」と呼ばれていた被告の卑劣な言動、さらに犯行後に被害者に沈黙を強いる様子、そして検察組織内の“ゆるさ”が子細に語られた。 なかでも、元検事正を擁護していたという副検事(女性)の存在は衝撃だった。この副検事は、事件の発端となった懇親会にも参加していたが、被害を訴える女性に寄り添うどころか、「PTSDは詐病だ」「お金目当ての訴えだ」「同意はあった」などといった被害者に対する誹謗中傷を流布し、さらに被告側に捜査情報を漏らしたとされる。被害女性はこの副検事を告訴したことも、記者会見で話した。 飲み会で泥酔した部下の女性に性暴力を振るう男性、そういう上司が順調に出世できる組織、そういう上司を庇う同僚、そして沈黙する大多数の組織人。どのような組織であっても、性暴力は起き、そしてそれが隠蔽される構造は驚くほど似ている。とはいえこの事件が、検察という、本来ならば不正義をただすべき側にいる組織内で起きた事実はあまりにも重たい。 何より衝撃だったのは、女性検事が語る「検察内のゆるい現実」である。自らが過去に性被害を受けたこともあり、性被害者に寄り添いたいという意思で検事を目指した女性が見た検察の実態は、次のようなものだったという。 「客観証拠が乏しい事件なんかは客観証拠がないからもう不起訴にしようとか、自分で積極的に捜査もしない、警察が集めてきた証拠をただパーッと見て、『あぁ難しいから不起訴にする』という検事も少なくない。被害者が声をあげているのに、それに寄り添わない人も少なくない」