89歳世界最高齢プログラマーの、常識や世間の目に囚われない生き方とは【和田秀樹対談まとめ】
5.89歳世界最高齢プログラマーに見る。「なんでも面白がる」精神が脳を刺激し、元気に長生きできる
和田 僕は人の目とか、世間体とかをあまり気にしないんですが、若宮さんもそうですか? 若宮 そうかもしれませんね。終戦で一日にして価値観が180度変わる体験をしていますからね。誰かの言いなりになる愚かさや恐ろしさのようなものを知っているので。 和田 銀行員時代は、当時、なかなか取る人がいなかった有給休暇も積極的に取得したとお聞きしました。 若宮 はい。GWの間の飛び飛びの日なんて、取引先も休んでいるところが多くて、会社に行ってもたいして仕事がない。だから有給を取って海外旅行に行ったりしていました。そんなふうに早くからやりたい放題でしたね。誰かに迷惑をかけるわけじゃないし、別に問題ないと。ただ同僚の中には「話題になっちゃう」と心配してくれる人もいました。私はまったく平気でしたけど。 和田 さすがですね(笑)。 若宮 価値判断は、人それぞれですから。「誰かに何か言われるのを気にする」か、「自分のやりたいことをやる」か。どちらを重んじるかは、各人の価値観で決めることですから、他人がとやかくいう問題ではないと思っています。
6.“健康じゃないとダメ”は間違い! 老いを受け入れて、足りない部分をAIで補う
若宮 みんなね、健康第一って言います。だけど健康っていつかは失われるんです。そして健康が失われても、その人の人生は終わらないんです。だからそのへん、よく考えておいたほうがいいと思います。 和田 その通りですね。 若宮 先ほど、メロウ倶楽部の話をしましたが、倶楽部にも車いすから一歩も降りられない人や寝たきりの人がいます。だけど精神的には豊かな暮らしをしているんですね。だから、健康第一っていうのも、もちろん悪くはないけど、さっきの「健康のためなら死んでもいい」みたいな絶対的な価値をあまり持たせないほうがいいと、私は思いますね。 和田 本当にそうだと思います。人によって程度の差はありますが、老いは必ずやってきます。私は高齢者の専門医として、多数の患者さんを診ていますが、経験から言うと、いつまでも健康や若さにこだわって老いと闘い続けている人は、今を楽しめなくなってしまうんです。「昔はできたのに、今の自分は情けない」と敗北感や挫折感にとらわれてしまうんです。 若宮 それ、わかりますね。 和田 もちろん、老いと闘ってもいいんですよ。でも例えば、いよいよ老いが迫ってくる80代になったら、素直に老いを受け入れてしまったほうがいい。