長崎1区 下条博文氏陣営2人逮捕から1週間 アルバイト関係者証言、違法性の認識なく
10月の衆院選で運動員に選挙運動の報酬を支払う約束をしたとして、長崎1区に自民党公認で立候補し落選した下条博文氏の陣営関係者2人が公選法違反(買収約束)の疑いで逮捕されてから27日で1週間。アルバイトとして選挙運動を手伝った女性の夫が26日、長崎新聞社の取材に応じ、違法性の認識はなく、当時通っていた講座の教室で知人に誘われたと証言した。 夫の説明によると、女性は衆院選前、長崎市で開かれていた講座の教室で受講生の一人から下条氏の選挙の手伝いをしてもらえないかと打診された。「時給千円」「バイト代の支払いは選挙後」などの条件を伝えられ、他の受講生約10人も一緒に承諾。「口約束」で、選挙事務所に出勤できる日を確認された。 女性は公示後、数日間出勤。1日7~9時間(休憩時間含む)働き、「事務所の人」の指示の下、電話で候補者への投票を呼びかけるほか、ポスターのシール貼りもした。事務所に来ていたアルバイトは一緒に応じた約10人の他に数人いたとし、選挙期間中、ほぼ全て出勤した人もいたという。 逮捕・送検された長崎市油屋町の団体職員の容疑者(66)と同市茂里町の会社役員の容疑者(61)については「覚えていない」、下条候補については「事務所の中で見たくらい」と話している。事件発覚後、女性は「違法と知っていたら手伝うわけがない。よかれと思ってやったのに…」と気落ちしているという。 県警によると、両容疑者らは共謀し、10月上旬から中旬の間、選挙運動の報酬として「時給千円」を渡す約束をした疑いがある。知人らを通じてアルバイトを集めていたとみられ、報酬は支払われていない。 下条氏や複数の陣営関係者らによると、団体職員の容疑者は後援会の事務局長で選挙中は街宣活動の調整など事務的な仕事に従事。「形式上は実務の責任者」との証言もある。会社役員の容疑者は「支援者の一人」で個人演説会の会場設営などを任されていた。両容疑者は昔からの知人で、これまでも自民党候補の選挙に関わることがあったとみられる。 公選法では、選挙運動の「総括主宰者」「出納責任者」「組織的選挙運動管理者」らが罰金以上または禁錮以上の刑が確定した場合、候補者の当選は無効となり、同一選挙区から5年間立候補できなくなる連座制を規定。捜査関係者は「肩書よりも誰が考案し、誰が指示していたのか実態が重要」とし、両容疑者の陣営内での役割や他に関与した人物がいないかどうかも慎重に調べている。