浸水隠し「クイーンビートル」日韓航路からの撤退を12月中にも正式決定…JR九州、船体の補強困難
JR九州の完全子会社「JR九州高速船」(福岡市)が博多港―韓国・釜山港を結ぶ旅客船「クイーンビートル」(定員502人)の浸水を隠して3か月以上運航を続けていた問題で、JR九州の古宮洋二社長は13日、報道陣に対し、亀裂による浸水が相次いだ船体(アルミ合金製)の補強が難しいとの認識を示した。同社は今月中にも日韓航路からの撤退を正式決定する。 【写真】記者会見で謝罪し、頭を下げるJR九州の古宮社長とJR九州高速船の大羽社長(11月26日)
JR九州が浸水隠蔽問題を受けて設置した第三者委員会は11月にまとめた調査報告書で、「船体補強への抜本的取り組みが重要な課題」と指摘した。
これを受け、JR九州とJR九州高速船は先月26日の記者会見で、右舷外板の溶接方法に問題があるとし、建造した豪州造船大手「オースタル」から右舷外板を取り寄せ、新たな溶接方法により強度の向上を図ると説明。アルミ合金の溶接の専門家を探すとしていた。
しかし、古宮社長は13日、「メーカー、専門家と話しているが、アルミは鉄より弱く、溶接も難しくレベルが高い」と述べ、ハード面の対策が難航していることを明らかにした。
JR九州高速船とオースタルがクイーンビートルの造船契約を締結したのは2018年で、当時のJR九州社長は青柳俊彦氏(現会長)だった。購入費は約57億円。20年9月に竣工したが、コロナ禍の水際対策で日韓航路での就航が見通せず、国土交通省から特例の許可を得て国内遊覧運航を行うなどし、日韓航路での運航開始は22年11月まで遅れた。