「セブンプレミアム エールズ」全国発売、競合と勝負できる価格設計の「デイリービール」1カ月で100万本を突破
セブン&アイ・ホールディングスはサントリーとの共同開発商品である「セブンプレミアム エールズ」(350ml・500ml)の販売を17日から全国のセブン&アイグループ約2万2,300店舗に拡大する。350ml缶が180円(税込198円)、500ml缶が245円(同269.5円)。 10月22日から、関東、東北などの一部地域で先行販売しており、わずか一カ月で100万本を突破し、好調な売れ行きを記録している。
その要因は何と言っても求めやすい価格だろう。CVS(コンビニエンスストア)で通常のレギュラービールの店頭価格は、350ml缶で税別204円前後、500ml缶で同266円前後である。 しかし、その魅力は価格だけではない。サントリー「ザ・プレミアム・モルツ」でも使用する「磨きダイヤモンド麦芽」を一部使用する“本格派"な味わいに仕上げた。麦芽100%のエールタイプ(上面発酵)を使うことで、みずみずしい香り、しまりある苦味とかろやかさが特徴だという。
サントリーの醸造技術とセブン&アイのプライベートブランドの開発力を融合することで、品質と価格の両立を実現したわけだが、その開発の背景についてセブン-イレブン・ジャパン商品本部飲料・酒・加工食品部マーチャンダイザーの畠中拓志氏に聞いた。 「昨年10月のビール減税で缶ビールは値下げして販売増を見込んでいた。しかし、ビールのチャネル別市場をみると、CVSでは、12月頃までは金額・数量とも前年比プラスになっているものの、2月頃から金額では前年を割っている。一方、SM(スーパーマーケット)では、減税後、金額では2ケタ増、数量では1ケタ増がずっと続いている」。 CVSでは減税分を反映して缶ビールの価格を値下げしたが、SMでは減税分以上の値下げが行われている店舗もある。つまり、それまで以上にCVSとSMではビール1缶の価格差が広がってしまったのだ。昨今の物価高騰から消費者の節約防衛意識は高い。「ビールのお客様がCVSからSMに流出してしまった」と振り返る。 セブンプレミアムのビール類でロングセラーとなっているのは第三のビール(発泡酒〈2〉)である「ザ・ブリュー」だ。2009年に発売して15年販売を継続している。「一方で、セブンプレミアムの狭義のビールは、残念だが、定番商品として定着する商品はなかった。これはナショナルブランドと価格を横並びにしたという要因がある。“金のビール”に至っては10円以上高かった。過去の失敗事例でみると、どうしても価格面という問題が横たわる」。 今回はその反省を踏まえて、価格優位性で勝負をかける。グループのイトーヨーカドー、ヨークベニマルなどでも販売するため、SMの実勢売価(350ml缶で税別188円前後)と比べても、さらに下回る価格を設定した。今回、価格を抑えられた要因は▽プライベートブランドでありそもそもマーケティングコストを抑えることができる▽すでに売れている「ザ・ブリュー」のメーカーもサントリーであり、同じ物流に乗せることで物流費を抑えることができる▽カートンの印刷を一色にするなどで、包材費などを効率化したこと――などによるという。 ◆「価格重視だけの商品ではない」―畠中マーチャンダイザー しかし畠中氏は「安いビールをセブンプレミアムで出すということではない。価格だけではないことが最大のポイントだ」と強調する。今回、フォーカスしているのは「毎日でも飲みたくなるようなデイリービール」だ。その思いで中身設計を行ったという。 ラガーではなく、香りがはなやぐエールに味の方向性を定めた。前述したとおり「ザ・プレミアム・モルツ」と同じ麦芽を使用した、麦芽100%の本格ビールだ。加えて「毎日でも飲みたくなるデイリービールとして、飲みやすく、軽やかさのある味わい」を追求した。「ビールユーザー層だけでなく、ビールをこれまで飲んでこなかった方、エントリーユーザーも取り込める」と自信を見せる。 実際、各店舗への案内をしたところ、予想を大きく超える反響があった。受注を集約したところ、事前の販売目標をはるかに上回り、結果、10月21日の一斉発売ができなくなったほどだ。順次エリアごとに少しずつ広げる対応を余儀なくされた。21日の週に首都圏の一都三県で、その2週間後に東北・北関東に拡大している。 すでにメーカーとのすり合わせでは当初想定の2倍以上の販売になっており、セブン-イレブンはもちろん、イトーヨーカドー、ヨーク等のSMでも好調に売れているという。大いに注目されるプライベートブランドの誕生だ。
食品産業新聞社