日銀・黒田総裁会見9月19日(全文1)7月の政策修正「評価するのはやや性急」
きのうの麻生財務大臣が閣議後の会見での気になる発言について
テレビ東京:テレビ東京の大江と申します。よろしくお願いいたします。きのう麻生財務大臣が閣議後の会見で気になる発言をされています。本当に物価上昇率2%になるなんていうこと、責任を感じて不必要なことをやるのはやめたほうがいいということに関しては政府、日銀の両方で一致をしていましたというふうにおっしゃっています。これはつまり2%というのは達成しなくても良いという認識を早い段階から政府と日銀で持っていたということなんでしょうか。 黒田:麻生大臣の発言は報道されていることは知っておりますけども、その詳細は承知しておりません。ご案内のとおり2013年の1月の政府と日本銀行の共同声明にもうたわれていますように、政府と日本銀行はデフレ脱却と持続的な成長のために、さまざまな政策的努力をしておりまして、日本銀行としてはその共同声明にもうたわれているように2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するというために金融緩和を大胆に行ってきているわけであります。 ただ、確かに2013年4月に量的・質的金融緩和を導入した際、2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現しようということで始まったわけですけれども、ご案内のとおり2014年の一番大きかったのは夏以降ですね。原油価格が大幅に下落したということから、足元の物価上昇率が下がり、それがいわゆる適合的期待という形で中長期的な物価上昇の予想にも影響を与えたということで、全体として2%の物価安定の目標がいったん遠のいたわけですね。その後さまざまな金融政策上の措置を講ずることを通じて、再び物価上昇率は上昇してきているわけですけれども、まだ依然として生鮮食品を除く消費者物価の上昇率は0%台後半というか1%を若干下回ったところで推移しているということですので、時間が掛かっていることは事実ですけれども、私どもとしては2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するという2013年1月の金融政策決定会合の決定、あるいはそれを踏まえた政府との共同声明にうたわれているとおり、引き続き2%の物価安定の目標をできるだけ早期に達成すべく、金融緩和を続けるということでありまして、その点には変化はないと。ただ、当初、2013年4月に考えていたよりも時間が掛かっていると。従って粘り強く金融緩和を続けて2%を達成する必要があるというふうに考えています。 テレビ東京:そうした状況の中で、安倍総理が自民党総裁選の候補者討論会の中で、異次元緩和から出口に向かうことについて、次の総裁任期のうちにやり遂げたいという発言をしています。そうしますと、これから3年で異次元緩和に向かう、異次元緩和の幕引きというのができるのかどうか、というところが疑問なんですが、どうなんでしょうか。 黒田:総理の発言については具体的にコメントすることは差し控えたいと思いますけれども、先ほど来申し上げているとおり、政府と日本銀行はこの5年間、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のために必要な政策を実施してきておりまして、その下でご承知のように雇用、あるいは企業収益その他を含めて、わが国の経済情勢は大きく改善しておりますし、物価についてもすでに物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっているということだと思います。 ただ、やはり2%の物価安定の目標はまだ実現できておりませんので、日本銀行としては2%の物価安定の目標の実現に全力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。もちろん2%を達成しても今の異次元の金融緩和をずっと続けるということはないわけでして、あくまでも2%を達成して、そういった状況にしていく必要があるというふうに考えております。 【連載】日銀・黒田総裁会見(2018年7月31日) 全文2へ続く