さいたま市PTA協議会、約1080万円の使徒不明金問題の「その後」 各校を束ねる上部団体、PTA連合の存在意義
約1080万円にも及ぶ不明瞭な会計処理が出た理由
埼玉県さいたま市の小・中学校148校のPTAを束ねるさいたま市PTA協議会では、2023年3月、内容が不明瞭な会計処理が判明。第三者委員会を設置し調査したところ、元会長が使途不明金を巡り内規違反があったとして、2024年6月に同氏を除名処分。また、同氏が2018年から上部団体である公益社団法人日本PTA全国協議会(以下、日P)の理事などを務め、事務局を事実上統括して不明瞭な赤字を計上していたことに対し、日Pに公開質問状を複数回送ったが回答がないなど「正常なガバナンスが機能していない」と判断し、2024年6月に日Pを退会した。さいたま市PTA協議会は、一連の混乱とどう向き合い、現在どのように取り組んでいるのか。地域のPTA連合(P連)の存在意義と、その役割とは。さいたま市PTA協議会会長・郡島典幸氏、副会長・和田洋樹氏、小日向哲典氏、事務局長の溝口景子氏に聞いた。 【写真で見る】さいたま市PTA協議会は2024年6月に「正常なガバナンスが機能していない」と上部団体である公益社団法人日本PTA全国協議会を退会した ――2019年度から2022年度にわたり、内容が不明瞭な「防災事業費」が市内の保険代理店に支払われていたことが発覚し、その金額は約1080万円に及びました。第三者委員会の調査により元会長の内規違反によるものと判明したそうですが、なぜ、4年という長期間、不透明な会計処理が続いたのでしょうか。 郡島:一番の原因は、善良なボランティア精神による運営を過剰に信頼していたことにより一部の役職者やOBに権限が集中し、長期間にわたる不正会計への関与を止めることができなかったことと考えています。 第三者委員会の報告書にも記述がありましたが、2016年から2018年度にかけて当協議会の会長、2019年から2020年度にかけて顧問を務めていた人物に権限が集中し、運営を私物化していました。トップダウン体制で多くの役員に詳しい事情が知らされず、不正に気づかない状況だったと認識しています。 私は2023年度から会長を務めており当時の理事会メンバーではなかったのですが、「総会資料を見ると、予算書には入っていなかった項目が決算書に入っていたことがあった」と聞いています。毎年多くの役員が入れ替わる中で、決算への疑問を指摘できるほど事業に精通している人が少なかったことも、一因としてあげられると思います。 ――役員が集まる理事会でも、元会長に対して意義を唱えにくい雰囲気だったのでしょうか。 和田:例えば個別の事業について、事業を具体的にどう行うのかなど、内容についての議論は行われていました。しかし、「この事業をなぜやるのか」という側面や「お金がどのくらいかかるのか」といった、会計的な側面からは、解像度の高い議論はできていませんでした。これは私の見方ですが、理事会での議案にお金(予算)のことが記されていなかったこと、それを疑問視し、声をあげる時間や余力がなかったことも大きいと感じています。 ――PTA連合という任意団体が第三者委員会を設置し調査するという事例は類を見ませんが、あえて設置した理由をお聞かせください。 溝口:私は現在事務局長で、2022年度の1年間(2022年6月~2023年6月)会長を務めました。任期中にそれまでの不明瞭な会計処理が発覚したので、このまま次の総会には通せないと判断しました。 不明瞭な会計が、どのように取引がされていたのか徹底的に精査することが急務であると理事会で協議し、当協議会運営に関する細則に基づき、特別委員会を設けました。この委員会での検討もふまえ、専門的かつ客観的な見地からさらに調査を進める必要があると判断し、第三者委員会を設置することにしました。 郡島:「このままではいけない」「徹底的に調べよう」と。第三者委員会設置決定後、「誰に調査してもらうのか」「調査はしてもらうが、その結果をどのように報告するか」「調査費用はどこから捻出するのか」など、役員からさまざまな意見が出て相当議論を重ねました。 その結果、専門的な分野に関しては弁護士1名、税理士1名に調査をお願いし、助言を受けながら理事会で検討、決裁していくことになりました。また、活動の透明性を保つ意味でも、調査の経緯や結果は逐一当協議会のホームページ上で公表していくことにしました。 ――調査費用はどのように捻出されたのでしょうか。 郡島:当協議会の会計は、会員校からの会費(会員1人当たり年50円)や市からの補助金からなる「一般会計」と、保険事業事務手数料収入等からなる「保険事業会計」の2つに分かれています。調査費用は一般会計からではなく、2023年度の保険収入からまかないました。