その存在と音楽を百年先まで。映画「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」創作秘話
──『恋するピアニスト』というタイトルに込めたお気持ちをお聞かせください。 小松 フジコさんは心が“永遠の16歳”で、“ときめき”がこの方の原点だという気がしています。戦争を経験し、シングルマザーの母の苦労を目の当たりにし、耳を患ったり、ドイツではお金や食べ物に困ったり、いろいろな意味で自分の中のコンプレックスと向き合って来た人だと思います。だからこそ着る服を自分に似合うようにリメイクしたり、自分の周囲3メートル以内にお人形や写真など、好きなものを集めて、レイアウトにもこだわり、そうやって自分だけの世界観を創ることで、 孤独から自分を守っていたように思います。 僕から見たフジコさんに多面性がある中で1番きれいなのは、少女のようにときめく心を汚さないようにしているところで、それを言葉にすると恋するということなのかと思って名付けました。新しいもの好きで、他の人と違うことに誇りを持つフジコさん。そんな「恋するピアニスト」であることがフジコさんの何よりの魅力だと思います。 小松莊一良(SOICHIRO KOMATSU) ロサンゼルス生まれ。広島県呉市で育つ。吉川晃司、HYDE、東京スカパラダイスオーケストラ、藤あや子、ケイティ・ペリーなどの映像やステージなどを監督として手がけた作品は多数。2018年に安室奈美恵の引退ライブ作品の監督を務め、音楽映像史上初の累積売上170万枚の記録的ヒットの一助となる。2024年、新しい学校のリーダーズの初武道館ライブ映像で第14回オリジナル番組アワードにて総合グランプリと中継部門・最優秀賞を受賞。フジコ・ヘミングの映像やコンサートの演出も長年手掛け、企画・監督したドキュメンタリー映画『フジコ・ヘミングの時間』(2018年/日活)が異例のロングランヒットとなり、海外にも公開が広がった。大阪芸術大学 映像学科 客員教授も務める 映画「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」(2024年/東映ビデオ, WOWOWエンタテインメント)が10月18日より新宿ピカデリーほかで全国ロードショー BY SHION YAMASHITA