ドルトムントがCL決勝進出を果たせた理由。ドイツ国内リーグで苦戦も、欧州の舞台で輝けた“カップ戦仕様”
世界のトップに君臨するチームの条件
ただ、カウンター戦術をベースに国内リーグを戦い抜くのは難しい。 ブンデスリーガでは立場が逆になるのは一目瞭然。ドルトムントがリーグ下位のチーム相手に守備固めをするわけにはいかないが、自分たちでボールを保持してバリエーション豊かな攻撃でゴールを強襲するサッカーを突き詰めるためには、それ相応の時間が必要だ。まだそこまで手は回せない。結果、個の力に依存せざるをえなくなり、結果攻めあぐねて、ミスをして失点してしまう。 加えて「メンタル的な難しさ」も理由として挙げられる。世界最高峰の舞台であるCLではアドレナリン大噴出で、モチベーションは誰に何かを言われなくとも最高レベルに高い。ワールドワイドなショーウィンドウ。自身をアピールするステージとして、自分たちの存在を知らしめる場所として、ファンとの絆を高めあう場として、これ以上の舞台はない。 だからこそメンタルに及ぼす影響もすごく大きい。元日本代表キャプテンの長谷部誠がフランクフルトでCL出場したことについて、こんなことを明かしてくれたことがある。 「僕らはチャンピオンズリーグでのナポリとのホームゲームで負けたところで、気持ちがガクンときてしまった」 試合の舞台が大きければ大きいほど、その試合後に心身にもたらす負担は勝っても負けても大きい。負けたら大きなショックだし、勝ってもそこで一度、気持ちが安定しなくなる。フワフワしたような状態に陥りがちだ。 もちろん、国内リーグ戦だとやる気がないわけではない。多くの選手が「最大限の集中力とモチベーションで試合に臨まないと」と常に口にするように、試合前やハーフタイムには間違いなく気合いを入れる。でも人間の体や心や頭は、常に最大限の力を出せるものではない。頭では、心ではなんとかしようと思っても、身体が反応しない時がある。 そしてどんな試合でも、どんな大会でもこの振れ幅を可能な限り小さくできる選手が揃うチームが国内リーグ&世界のトップに君臨するのだ。 「優勝を争うようなチームというのは、悪い時の波をできるだけ小さく、短くできる」 これも長谷部の言葉だ。調子が悪い時はどんなチームでも、どんな選手でもあるとはいえ、短期間で復調できてこそワールドクラスのクオリティだ。元日本代表FW岡崎慎司は常勝軍団のレアル・マドリードを例に挙げ「クラブの名前が持つ経験値が違う」と表現していたが、レアルの選手の立ち振る舞いを見ているとそれが何を意味するかがよくわかる。