TSMC「ピークはまだ」敵失でAI半導体ブーム独走、ASMLショックで鮮明になったインテルとサムスンの苦境とは
■強まる独走体制 ASMLのEUV露光装置は1台200億~400億円程度と高額で、最先端装置は500億円近いとされる。年に数十台の出荷で納期も比較的長いため、大口顧客の投資削減のインパクトをもろに受ける。 一方で、ほかの国内装置メーカーの中からは「インテルやサムスンが投資を削減したとしても、最先端半導体へのニーズは変わらない。装置の出荷をTSMCに振り向けるだけ」(国内装置メーカーのIR担当者)との声もある。TSMCは顧客のAI需要を1社で吸い込んでいるにとどまらず、サプライヤーへの求心力もさらに高めている構図だ。
TSMCが製造する現在の最先端品は、3ナノ世代の半導体。最大顧客のアップルが2023年9月に発売したiPhone 15シリーズから搭載が始まっており、わずか1年で売上高の20%を占めるまでになっている。2025年後半には、次の世代に当たる2ナノ品の量産が始まる予定だ。「3ナノと比較して、これまでの想定以上の需要がある。3ナノよりも多くキャパシティを用意する予定」(ウェイCEO)。 こうした見通しを受けて、会見時には独占禁止法に抵触するリスクについて問われる場面もあったほどだ。AI需要がバブルで終わる可能性は拭いきれないが、その過程でTSMCの独走態勢制がより強固になっているようだ。
石阪 友貴 :東洋経済 記者