急拡大ファストステーキ店とは?~人気のハンバーグ店も続々
おいしさの秘密が、店内で行われる800度を超える高温の炭火焼き。職人が編み出した「8面焼き」で仕上げていく。向きを変えて2回焼き、クロスの焼き目を入れる。ひっくり返して裏面も同様に。こうして丁寧に全ての面を香ばしく焼き上げていくことで、おいしい肉汁を閉じ込めることができるのだ。 良質な牛を育てるため、2003年からオーストラリアで牧場経営まで始めた「ハングリータイガー」創業者の井上修一。牛は放牧で育て、草だけを食べさせている。 「『満足した、おいしかった、また来るよ』と言っていただける状況に全てを仕上げていく。それが究極の目的です」(井上)
外食レジェンドが直撃~ステーキ戦争の裏側
肉の外食で日本中の話題をさらったのが2013年に1号店を開いた「いきなり!ステーキ」。分厚いステーキを食べたい量だけ立ち食いで、という斬新な業態に客が殺到。2019年には493店舗にまで拡大した。運営する「ペッパーフードサービス」の一瀬邦夫社長(当時)は一躍時の人になり、ついにはアメリカにまで進出した。
しかしその後、街中に類似店が溢れ「いきなり!ステーキ」は出店戦略の見直しを余儀なくされた。すると、その間隙を突くように急拡大するステーキ新勢力が現れる。2020年に沖縄から東京に進出した「やっぱりステーキ」だ。 全国で約90店舗を展開。一気に客をつかんだ理由は、低価格なのにおいしいミスジと呼ばれる部位にある。希少部位のミスジは、ほどよい甘みが特徴の赤身肉。「スジが多い」という欠点がありあまり使われていなかったミスジを丁寧に処理し、格安のおいしいステーキへと変貌させた。
沖縄から殴り込みをかけた「ディーズプランニング」社長・義元大蔵は「ステーキを日常食にしたい。毎日でも食べられる気軽な食事にしたいです」と語っている。 こうして新業態が次々に登場し、戦いを繰り広げる外食産業を長年見続けてきたのが、「すかいらーく」創業者で現「高倉町珈琲」会長の横川竟(86)だ。76歳で「高倉町珈琲」を創業。現在、39店舗にまで拡大している。 横川が今も欠かさないのが気になる最新の外食店の調査だ。「(調査は)カフェ業態とは関係ないですが、自分がやろうとしていることと“同じ考え方”で成功していると、同じことをやればいいという裏付けになります。うちの欠点を見つけるのです」と言う。 そんな横川が「気になる」と訪れたのは、東京・足立区の「感動の肉と米」北千住店だ。 あっという間に出てきたステーキを、早速実食する。「溶岩プレートがあるから焼く時間が短縮できる。逆に言うと焼きたてが食べられる。うまいです」と言う。ただしこの店舗については「換気が悪い。もっと店内を爽やかにするともっと売れて、あと2~3割は伸びると思います」と、気になる点も指摘した。 「立地を間違えなければすごくいいチェーンになる。この質が守れたら1000店になる」(横川) 一方、急増する格安ステーキ店についてはこう語る。 「スタート時は1000円で出せるが、しばらくたつと値上げするのはどの企業も共通している。値上げをすると新たな店が出てくる“追いかけっこ”をやっている。今後は『感動の肉と米』『やっぱりステーキ』『いきなり!ステーキ』3社の戦いになると思います。どれもそれなりに特徴があるので、我慢してどこまでやっていくか」(横川)