年間1168回!航空自衛隊の緊急発進が急増したきっかけとは?→幹部が明かす2012年の「あるできごと」
● 8月、中国軍の情報収集機が 日本の領海上空を侵犯した 前回に引き続き、防衛省 航空自衛隊 南西航空方面隊副司令官の中島隆幸氏と、第9航空団司令 兼 那覇基地司令である鈴木繁直氏のインタビューをお送りする。 那覇基地を拠点とする航空自衛隊 南西航空方面隊は、日本の空の防衛最前線である。8月、この取材が実現すると決まった翌日に、中国軍のY-9情報収集機が長崎県男女群島沖の領海上空を侵犯するというできごとが起きた。これに対し航空自衛隊は西部航空方面隊から戦闘機を緊急発進(スクランブル)させ、通告及び警告を実施した。 その直後、海上自衛隊の護衛艦が台湾海峡を通過。これに対し中国政府は「中国の主権と安全を損なう挑発行為」だと強く反発している。これについて「領空侵犯に対する一種の意趣返しなのですか?」と問うたところ、二人とも「自衛官にそういった発想はない」と断言した。ここまでが前回のダイジェストである。
● 北朝鮮の飛行機が 日本の領空には飛んでこない理由 フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):北朝鮮の飛行機は日本の領空近くに飛んでこないのですか?あれだけミサイルを頻繁に撃つのだから、それ相応に飛行機も飛んできそうなものですが。 防衛省 航空自衛隊 第9航空団司令 兼 那覇基地司令 鈴木繁直氏(以下、鈴):北朝鮮機については推定を含め、2009(平成21)年度は8回、2013(平成25)年度に9回、そして昨年度、約10年ぶりに2回対応しています。また韓国の報道によれば、一昨年は約180機の北朝鮮軍機に対して韓国軍約80機で対応したとか、昨年は米軍機が北朝鮮のEEZ(排他的経済水域)内を飛行したとして、北朝鮮機が対応したという報道もあります。なので、北朝鮮の飛行機がまったく飛んでこないというわけではないのですが、頻度としてはとても少ないです。一方で、弾道ミサイルの開発、発射活動は活発になっていますね。 F:弾道ミサイルを重視するあまりに、航空機の方は手薄になっている可能性がありますね。 中:我が国の情報収集能力が明らかになることから言及はできませんが……ただ一般論として、例えば航空機を維持運用するよりも、弾道ミサイルを持つほうが、コスト面では非常にリーズナブルです。だから北朝鮮はミサイルに特化しているのではないでしょうか。 中:彼らにとっては、国の存亡に関わる死活問題ですからね。国際的に批判を受けようとも、何度も撃ってくる。