Mrs. GREEN APPLE、15人で晴れやかに鳴らした真骨頂 定期公演『Harmony』は心と体で対話できる空間に
音と音、人と人の、大胆かつ繊細な接触がもたらす、華やかな高揚と深い感動。楽器同士の重なりは花火のように色彩豊かで、そこには騒々しい喜びや祝福も、痛みや混乱が沈殿した夜の静けさも混ざり合っていた。歌はときに激しく感情を解放し、ときに優しく心を撫でた。ステージの上をしなやかに動き回る大森元貴(Vo/Gt)の体の動きは、ひとりの人間として自然体であることと、巨大なポップスターとして迫力を放つことを同時に可能にしていた。それは“野性的”とでも言ってもいいような原初的な音楽の力強さと喜びに溢れ、それでいて“新しさ”にも満ちた、特別な空間だった。そして大切なことだと思うので最初に書いてしまうが、“音楽”がとても大切にされている空間だった。音楽が生き生きと鳴り響き、それを私たちが生き生きと受け止めることができる空間だった。それがとても素晴らしかった。 【写真多数】ミセス、総勢15人で鳴らした『Harmony』のステージ 11月20日、Mrs. GREEN APPLE(以下、ミセス)が神奈川・Kアリーナ横浜にて定期公演『Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”』のファイナル公演を開催した。“ツアー”ではなく“定期公演”と冠された今回のライブは、Kアリーナ横浜というひとつの会場を舞台に、10日間にわたってミセスがライブを行うというもの。これまでも音楽劇的なアプローチを行うなど、実験的で多彩な表情を見せてきたミセスのライブ芸術に新たな側面をもたらすものとなった。 舞踏会の会場のようなゴージャスなセットを背景にステージに立った演奏者は、メンバー 大森、若井滉斗(Gt)、藤澤涼架(Key)の3人に、ベース、ドラム、パーカッション、さらに管弦楽隊による12人のサポートミュージシャンを加えた総勢15人の大所帯。こうした大所帯のライブと言うと襟元を正して聴かなければいけないような、格式ばった緊張感のある空間を想像する人もいるかもしれないが、『Harmony』の空間はそういうものではなかった。15人の演奏家が織り成す演奏は無邪気さすら感じさせるほどにパワフルで、迫力満点だが決して威圧的ではなく、「手を繋いで一緒に踊ろう」と聴き手に語り掛けてくるような親しみやすさとダイレクトさとユーモア――言うなれば“ストリート感”のようなものが音の中にあった。 加えて、今回の『Harmony』はライブ全編にわたり観客たちによる撮影が許可されていた。ミセスがこの『Harmony』という定期公演で生み出そうとしたのは、より自由で解放感のある空気感の中で一人ひとりがその場所に入れるような、そして、音楽と深いコミュニケーションを取ることができるような、そんな空間だったのだろう。 大らかに響き渡るメロディ、躍動するリズム。披露されたのは、アンコールなしの全19曲。「Magic」「ライラック」「Dear」「ケセラセラ」「コロンブス」「familie」――そんな今のミセスを象徴する代表曲やヒット曲たちはもちろん、「光のうた」や「ア・プリオリ」といったシングルのカップリング曲までも披露される特別なセットリストだ。アッパーな楽曲とメロウな楽曲が交互に演奏されていく流れも新鮮だった。「このセクションは盛り上げて、このセクションは落ち着かせて」というような作為的な流れではなく、1曲1曲が巨大な没入感を生み出しながら披露されていく流れには、じっくり深く、ときには衝動的に、心と体で音楽と対話できるような心地よさがあった。