<トランプ支持者の対中強硬論>習近平帝国を力でねじ伏せる強硬的算段とは
勝利への第二の方策は、中国の意図を変えさせることである。習近平の考えは決まっている。しかし、将来世代の中国の指導者は、米国とその同盟国と、より協調的な道を選ぶかもしれない。この第二の方策は、第一の方策を進めることでやりやすくなる。 勝利への第三の方策は、中国の体制転換である。中国の体制転換が米国にとって良いのは、民主主義や人権の観点からではなく、中国が米国を脅かす能力と意図を挫くからである。 これら三つの方策は、相互に補完的なものである。米ソ冷戦は、これらの結果の複合によって終結した。現在の中国の攻撃的姿勢は、中国の悪質な行動に対して適切なコストを課してこなかったからである。 将来に渡って中国の脅威が減ずるようにするには、断固たる対決姿勢をとる必要がある。勝利を実現するためにはそれを構想しなければならない。米国とその同盟国は、勝利の構想を念頭に置いて、新冷戦を勝利することを目指していくべきである。 * * *
米中冷戦と米ソ冷戦の違い
上記は、米国の共和党系の論客であるクローニグとネグリアによる対中政策についての論考である。米国において「対中強硬」は、民主・共和両党で意見が一致する数少ない分野と言われるが、この論考は、バイデン政権の対中政策を批判しながら、共和党陣営内で自分たちの存在をアピールする狙いがあるのだろう。 この論考の著者二人は、本年3月に『われわれは勝ち、彼らは敗れる―共和党の外交政策と新冷戦(We win, They lose: Republican Foreign Policy and the New Cold War)』という著作を上梓した。この本には「レーガン・トランプ融合」という章があり、「力による平和」をキーワードにして、トランプ外交を冷戦終結時のレーガン外交に類似したものと捉えている。 第二次トランプ政権が誕生すれば閣僚として政権入りが取り沙汰されるマイク・ポンペオ(2017年からのトランプ政権時のCIA長官、国務長官)がこの本の序文を書いていて、第二次トランプ政権下での政権入りを狙っていると思われる。 上記論考では、中国との争いを「新冷戦」と捉え、中国を力で圧倒し、中国の意図を挫き、中国の体制転換を図ることによって中国に対して勝利すべしと説いている。 クローニグとネグリアは、中国との争いでの勝利を目指すに際し、米ソ冷戦をイメージしている。しかし、今日の米中対立をかつての米ソ対立と対比すると、次の通り、いくつもの重要な相違点があり、冷戦時の経験を容易に適用することはできない。 第一に、今日、米国は、かつてに比して軍事力をはじめとする国力が低減している中、中国以外にも、ロシア、中東と多くの課題を抱え、多方面に備えなければならない。