「ダサい」「時代遅れ」と思われていたお菓子のパッケージ変更が大炎上…あえての“炎上商法”は本当に効果があるのか?
イメージの操作とブランディング
このように考えてみると、商品や企業のイメージというものは、他者がある程度は操作できるものだとわかります。さまざまな道具立てによって、私たちはあるモノに対するイメージを形成して、それをプロジェクションというこころの働きでモノに付加しています。つまり、道具立てをうまく操作することで、形成されるイメージを操作することができます。 私がいろいろな炎上商法の例を見てあらためて気づいたのは、イメージは操作できるけれど、それが付加されたモノを「好き」になるか「嫌い」になるかといった感情については、イメージほど他者は操作できていないのだということです。 購買行動につなげるには、注目させてから興味や好意を持たせるところが重要です。感情や選択行動のコントロールができない炎上商法は、なかなかうまくいかないのでしょう。消費者は自分が自発的に選択している、という自覚を持っています。買わされているのではなく、自分が買いたいから買う、という行動が他者の共感を呼んでブームを生みます。 そのような自発的な選択の操作は難しいことを私たちはわかっているがゆえに、まさかそれを操作されるとは思いもしません。だから反対に、巧妙に操作された結果の選択であっても、それを自発的に選択したのだと思ってしまうようなケースがあります。たとえば、霊感商法やオレオレ詐欺などがそれにあたります。 イメージの操作は、形成したり付加したりする側面だけになされるわけではありません。これまでのイメージを払拭して、いったん白紙にするための操作もあります。 2023年9月8日、東京・原宿に体験型ジュエリーショップ「匿名宝飾店」がオープンしました。9月20日になって、店舗が「4℃(ヨンドシー)」という大手ジュエリーブランドのものであることが公表されました。4℃を運営するエフ・ディ・シィ・プロダクツの瀧口昭弘社長(当時)は「ブランド名によって蓄積されたイメージから離れ、今一度原点に帰ってジュエリーそのものを見てもらいたい、という思いでこの匿名宝飾店をオープンさせました」と語っています。 実は4℃は、SNSでアンチの意見も少なくないブランドとしても知られています。瀧口社長は取材で「触って見てもらったうえでなにを言われてもそれは仕方がない、そういう意味では誤解を解きたいという思いはあった」と話しています。この「匿名宝飾店」には、SNSなどで広がっていたマイナスイメージを払拭したいという狙いがあったのです。
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