手が不自由でもゲームやPC作業 3Dプリンターでオーダーメイドも…「自分事として知ってほしい」
ゲーム・パソコンができる「選択肢」知ってほしい
国立病院機構北海道医療センターの「神経筋/成育センターリハビリテーション室」の田中栄一さんは、作業療法士として働きながら、筋ジストロフィーなど筋力が低下してしまう病気の人たちにもゲームを楽しんでもらおうと取り組んでいます。 肢体不自由の人がゲームを始める時の支援の手引書なども制作(https://go-esports.jp/)しています。 1998年から作業療法士として働き、当時は通常のゲームのコントローラーを独自で改造していました。しかし、Xboxのアダプティブコントローラーを皮切りに、任天堂スイッチでも2020年にライセンス商品としてフレックスコントローラーが発売され、2023年にはソニーのプレイステーションでもアクセスコントローラーが発売されました。 田中さんは「ここ数年ほどで、アクセシビリティへの考え方は急速に進んできていると思います。きょうだいや友達のゲームを見るしかできなかった子どもが、自分も遊べるようになって『ゲームがあったから一人にならずにすんだ』と話していたのが印象に残っています」と語ります。 「障害のある人は『自分にはできない』と諦めてしまって、そもそも『ゲームを楽しむ』『パソコンで作業する』といった選択肢を持っていません。アダプティブアクセサリなどの選択肢があることが、もっと広まってほしい」
年齢を重ねたら「できないことが増える」
一般社団法人「日本支援技術協会」の事務局長・田代洋章さんは、「デジタルツールを使えない障害のある人や認知・身体機能の低下した高齢者には、情報格差が起きてしまっている」と指摘します。 協会では3年前から、障害のある人たちのデジタル活用をサポートする「デジタルアクセシビリティアドバイザー」を養成しています。 アドバイザー認定試験は、作業療法士といった医療職のほか、企業で障害者雇用を担当する人も受験しているそうです。 「便利なツールがあっても、困りごとにはやはり個別性があります。仕事、学習、買い物などの生活全般で何をしたいのかというニーズと、そのニーズを満たすためにどのツールをどうやって使えばいいのかという解決方法をつなぐのに、重要なのは『人』です」と語ります。 田代さんは「年齢を重ねれば、誰しもできないことが増え、障害はひとごとではありません。デジタルにアクセスするためのツールも自分事として、関心を持ってほしい」と呼びかけています。