ホームレスはどうやって「ホームレスになる」のか。誰であろうと、その可能性はある
体が弱くて労働ができず、ホームレスを選ぶ人もいる
私が荒川河川敷で会ったホームレスの1人は、病気がきっかけだった。 中高生の頃は不自由のない生活を送っていたが、学業は疎かだった。歌が好きだったので商店街のカラオケ大会に出たり、刺激が欲しくて車を飛ばし、警察に追いかけられたりしたこともあった。たばこも吸ったし、酒も飲んだ。高校を中退し、働いてお金を稼がなければならなくなると、まず専門学校の食堂に就職し、皿洗いや掃除をした。 しかし、幼い頃から喘息を患っていて、8時間連続で働くことができなかった。その仕事を辞め、派遣会社に登録した。毎日働く必要はないが、彼に与えられた仕事の多くは建設現場の肉体労働だった。 しばらく経つと、体が悲鳴を上げるようになったそうだ。仕事中、喘息がよく出て、休まなければならなかった。加えて彼はヘビースモーカーで、たばこをたくさん吸うのだが、そのたびに喘息がひどくなり、正常に仕事ができなくなった。 そして彼は、生きていくにはホームレスになるしかないと考えた。この時まだ32歳だったという。 もちろん、彼も公的な支援をあおいだり、他の道を選んだりすることができたかもしれない。しかし、若くても体が弱くて普通の人のように労働ができない人にとっては、ホームレスになることが現実味を増してしまうのだろう。
会社の倒産、リストラ......それぞれの理由
私が取材をしているのは荒川河川敷に暮らすホームレスだが、他の地域のホームレスたちも当然、それぞれに事情を抱えている。 「下町ぶっとびTV」というドキュメンタリーのYouTubeチャンネルには、給料をもらえず、会社を転々として、ホームレスになった江戸川河川敷のホームレスが登場する。 最初は大工に弟子入りをしたが、親方に借金があって、弟子に給料を払えなくなった。次に入った会社の社長は元暴走族で、いろいろと問題があり、会社がつぶれた。転職して型枠大工の仕事を始めたが、今度は社長が酒を飲み過ぎて死んでしまったそうだ。その後は再就職をあきらめ、ホームレスになることを選んだという。 一方、20年以上前の日本のテレビのドキュメンタリーで、新宿の親子ホームレスを取り上げたものがあった。親子は栃木県のホテルで一緒に働いており、父はそこの副支配人も務めていたが、息子は軽い知的障害があった(母は息子が3歳の時に離婚しており、家を出ている)。 親子は共にホテルにリストラされ、家賃が払えなくなって、やむなく上京する。東京の親戚を頼ったが、結局、夜はシャッターが降りた後の階段の踊り場で過ごし、昼は飲食店の裏に捨てられていた食べ物で空腹を満たす生活になったという。