なぜ金持ちは「家計簿」を重視しないのか 元メガバンク支店長が教える「収入ー支出」より「資産ー負債」の考え方
――なんだか難しいです。収入から支出を引いて、残りを貯蓄という発想はダメですか? 菅井:それは家計簿的な発想です。それだと見ているのは収入と支出だけで、いくら足りないと嘆き、もっと節約しようとか考えます。私が考える資産の種類は3つ。定期預金の利息や株の配当金を生む「金融資産」、家賃などの収入を生む「収益不動産」、そして「ビジネス力」です。ビジネス力は、あなたのスキルをお金に変える力のこと。収入は結果に過ぎません。お金持ちは、収入のもとになる「資産」を重視して、お金を管理しています。資産=負債+純資産で考えます。 ――そういう視点だと、毎月の住宅ローンの支払いがあったとしても、それは苦しさだけでなく、一戸建てなりマンションなりの資産があるという安心感に繋がりますね。 菅井:その通り。所有している不動産を新たなお金を生む可能性がある資産として考える。日々の生活ではどうしても「収入ー支出」に目が向きがちですが、「資産ー負債」で見た場合、思っている以上に純資産が大きくなっている人は多いのです。 ■「金融資産」、「収益不動産」、そして「ビジネス力」 ――おぉ、そうなんですね。バブリー女子としては、いろんなところに住んで引っ越しを繰り返して、自由に身軽に生きたいです。しかしそれもお金がかかり、最後にお金が残らないということに気づいてきました。 菅井:おぉ、さすがバブル女子……って褒めていませんよ(笑)。若い時から不動産資産を持たず貯金もしなければそうなりますね。日本の個人資産のおよそ6割は不動産です。私は不動産を含めた資産活用を勧めています。
――もうあと10年早く、菅井さんの話を聞いて心を正しておけばよかったとも思いますが、今からでも遅くないですよね。 菅井:今後の生活設計を親や子どもといった家族全体、つまり「連結」で考えると可能性は広がります。親との連結ベースで寝かせている資産はありませんか?親の残した家だったり別荘だったり……。働いていない資産を動かして輝かせるのです。親がもつ資産を「連結」して考えると、道は拓けます。企業が親会社・子会社といったグループ全体で考えて経営するのと一緒です。 ――リスクが怖くて、銀行口座に寝かしたままの僅かな貯金で不安を感じているのが、なんとなくもったいないようにも思えてきました。 菅井:漠然と将来が不安なのは、将来自分に必要なお金や、そのために今どのくらい足りないのかがわからないからです。私は48歳で銀行を退職するときまでにアパートを6棟買いました。その分借金がありますが、資産もあります。バランスシートで見ているので、あまり不安もありません。お金に困らない生活ができるかどうか。それはお金を運んでくれる仕組みづくりをできるかできないかだと思います。不動産投資が怖いという気持ちもわかります。失敗も怖いですし、不動産価格だけでなく、変動金利が不安な方も多いと思います。私は不動産投資だけが良いと言っているわけではなく、その人にあった資産の増やし方というのがあると思うので、それを自分のスキルや個性にあわせて見つけてほしいと思っています。ポイントは、それを自分の持ち金の中で完結させて考えるのではなく、「資産を増やしたければ、他人のお金を使う」という点。資産をつくるためのポイントはいかに「銀行の力」を利用できるか、にかかっています。 ――借金をして資産を増やす。親の資金をグループ化して連結で考える。まるで企業の代表になって、会社を大きくするような感覚ですね。そういう視点が大切なのですね。