メッツかフィリーズか…トラウト移籍にいよいよ現実味、エンゼルスがいま考えていること
ドジャースの黄金期
担当記者は「ファンサイデッドの記事は、エンゼルスが2014年以来、ポストシーズンに進出していないことを重く見ています」と言う。 「記事は『トラウタニ』のことも触れ、2人のコンビが機能しないまま、大谷はドジャースに移籍してしまったと総括しました。さらに近年のエンゼルスは若手の育成も失敗を重ねていると指摘。あえてトラウトを放出することで、見返りに有望な新人選手を獲得するメリットを強調しました。そしてトレード先の有力候補として、メッツとフィリーズの2球団を挙げたのです」 メジャー研究家の友成那智氏は「ここ数年、エンゼルスがトラウトの放出を考えてきたのは事実で、ファンサイデッドの報道は信憑性が高いと思います」と言う。 「トラウトのトレード報道を正しく理解するためには、エンゼルスとドジャースの歴史に触れる必要があります。ドジャースは投手力、機動力、守備力を重視した『スモールベースボール』を初めて考案したチームです。1958年にニューヨークからロサンゼルスに移転すると、60年代から70年代にかけて黄金期を迎えました。そしてドジャースの野球を熟知した選手が監督やコーチとなって他チームに招かれたのです。ちなみにV9を達成した巨人の川上哲治監督もドジャースと合同キャンプを行うなどして、ドジャース流のスモールベースボールを貪欲に学びました」
エンゼルスの黄金期
一方のエンゼルスは1961年に誕生した比較的新しいチームだ。80年代に2度の地区優勝を成し遂げたものの、強豪チームというイメージはなかった。 ところが2000年、新監督としてマイク・ソーシア氏が就任。ソーシア氏はドジャース一筋のキャッチャーで、引退後はドジャースのコーチやマイナーチームの監督を歴任した。 「ソーシア氏はドジャース流のスモールベースボールを、エンゼルスに植え付けたのです。その結果、スター選手が不在だったにもかかわらず、チームは躍進。2002年にはプレーオフ進出を果たすとリーグ優勝も成し遂げ、その勢いのままワールドシリーズでジャイアンツを下しました。今、日本のメディアは『エンゼルスよりドジャースのほうが人気』と報じています。それは事実ではありますが、2000年代のエンゼルスはドジャースよりも輝いていたことは強調しておきたいと思います」(同・友成氏) ところがドジャース流のスモールベースボールで躍進を果たしたにもかかわらず、2003年に就任した新オーナーのアルトゥーロ・モレノ氏はスター主義に方針を転換してしまう。次々と大物選手を高額契約で獲得し、長打率を重視するビッグボール志向を鮮明にした。 「これが失敗し、次第にエンゼルスの成績は低迷していきます。トラウトの初出場は2011年7月で、この時のチームはすでに2000年代の輝きを失っていました。しかしトラウトの打撃成績は素晴らしく、彼はMLB屈指のスター選手に成長します。ただし2021年、22年、23年のシーズンはいずれもケガに泣かされ、充分な成績を残せませんでした。この頃からエンゼルスは、トラウトの放出を検討するようになったのです」(同・友成氏)