違法判決が覆った「男子禁制」展示が豪美術館で再開。男性は抽選で「バトラー」として入場可能に
オーストラリア・タスマニア州の私設美術館、ミュージアム・オブ・オールド・アンド・ニュー(Mona)で展示されていた男子禁制のインスタレーション《レディース・ラウンジ》が、タスマニア州の反差別法に触れているとして女性以外の観客の入場を許可するよう裁判所から命じられていたが、最高裁で判決が覆されたことを受け、展示が再開した。 ことの発端は、2023年4月に35豪ドル(当時の為替で3150円)の入場料を支払いMonaを訪れたジェイソン・ラウが、同作の鑑賞を拒否されたことは州の反差別法に違反するとして同館を提訴したこと。ラウはタスマニア州の反差別委員会に苦情を申し立て、同委員会は裁判所へ彼の訴えを回付した。この一件は世界のメディアでも大々的に報じられた。 本作の作家であるカーシャ・ケイシェルはこの訴えに対し、本作は社会に根を張るジェンダー不平等や偽善を浮き彫りにする意図のもと制作されたと説明。事実オーストラリアでは、1965年まで女性がパブで飲酒することは禁じられており、店側は女性の入店を拒否するか、隠し部屋のような場所に案内して法外な料金を請求していたという歴史がある。こうした背景もあり、《レディース・ラウンジ》では、訪れた女性たちに男性バトラーが高級シャンパンを振る舞うのがパフォーマンスの一部となっていた。 裁判の結果、タスマニア州民事行政裁判所はMonaに対し、女性以外の来場者の入場を許可するよう命じたが、オーストラリア最高裁判所はこの命令を覆し、《レディース・ラウンジ》は反差別法に触れてはいないと判決を下した。これにより、本作の展示は晴れて再開されることとなった。展示の再開に際してケイシェルは次のような声明を発表している。 「女性の皆さま、お待たせしました。この裁判を通じて、《レディース・ラウンジ》は美術館という枠を超え生まれ変わりました。女性たちが現在に至るまで経験してきたことを、この展示の体験を通して人々に考えてもらいたいです。本来の場所に戻って再開できたことを記念して、バトラーたちの献身的なサービスと、素晴らしい幕開けを祝うためのシャンパンをたっぷり用意しています!」 男性は原則、依然として本作への入場を禁じられているが、Monaのアプリ「O」から抽選に申し込めば、当選した男性は入場が許可されるようになった。ただし、彼らはバトラーとしてしか参加できないという条件付きだ。同館が発表した声明には、「当館への入場券を購入しても《レディース・ラウンジ》への入場は女性に限定されており、男性の入場は制限されています」と記されている。 将来的にMonaでは、《レディース・ラウンジ》に関連したパフォーマンスやイベントも企画される予定。ケイシェルは、展示再開を記念して「Verdict(裁定)」と銘打たれた香水を限定販売すると発表しており、美術館によるとこの香水は、「エレガントな花の香りとみずみずしいグリーンの茎、ジューシーなシトラス、そしてほのかに香るスパイス」をまとった「屈しない女性」のためのフレグランスだという。