国会前では市民が警察官ともみ合い「反対」シュプレヒコール…与党代表も「必ず阻止」
【ソウル=依田和彩】韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が3日夜、戒厳令を突然宣言したのは、少数与党で国政がマヒ状態に陥る中で、強権的な手法で国政の主導権を回復する狙いとみられる。今後、軍事政権時代を連想させる統制強化が予想され、ソウルでは深夜まで大きな混乱が生じた。 【動画】兵士が窓から国会に突入、韓国で戒厳令
ソウル市内の国会前では4日未明現在、国会が封鎖されかねないとの危機感から多くの市民らが正門前に集まり、警察官らともみ合いが続いた。「戒厳に反対」という市民らのシュプレヒコールが響いた。
戒厳司令官が出した戒厳布告令によれば、国会での政党の活動や集会などの政治活動は今後禁止される。
保守系与党「国民の力」の韓東勲(ハンドンフン)代表は3日夜に声明を発表し、「大統領の非常戒厳令宣言は間違っている」と強く批判した。
聯合ニュースによると、韓氏は韓国の記者団に対し、「(与党は事前に)全く知らなかった。国民と一緒に間違った戒厳令宣布を必ず阻止し、自由民主主義を守りたい」と語った。
左派系最大野党「共に民主党」の李在明(イジェミョン)代表は3日夜、ユーチューブで戒厳令の宣布について「違憲で反国民的」と批判し、「国民の皆さんは国会に来てほしい」と呼びかけた。「戦車と装甲車、銃剣を持った兵士たちがこの国を支配することになる」と訴えた。
尹氏は3日夜、大統領府で発表した緊急談話で、「非常戒厳令を通じ、亡国の淵に落ちている自由大韓民国を再建し、守っていく。これまで悪事を働いた反国家勢力を必ず撲滅する」と述べた。戒厳令宣布の目的について「体制転覆を狙う反国家勢力の蠢動(しゅんどう)から国民の自由と安全、国家の持続可能性を保証する」ことなどを挙げた。
4月の総選挙で与党「国民の力」は大敗。尹氏は夫人のスキャンダルなどで支持率が20%前後まで落ち込み、2年以上の任期を残す中で、求心力が著しく低下している。
緊急談話では「大統領として血を吐くような気持ちで国民の皆さんに訴える」と述べ、野党が閣僚や検事の弾劾(だんがい)を推進し、司法や行政をマヒさせていると訴えた。
ただ、こうした手法が国民の支持を得られるかは不透明で、更なる混乱も予想される。