芸人エハラマサヒロ「人間は死ねないんだな」―過去を乗りこえ、たどり着いた家族観
これまで語ってこなかったつらい過去 「1秒も前に戻りたくない」
いつでも明るく前向きな印象のエハラマサヒロさん。昔からそうだったのかと思いきや、実は10代の頃に、これまで語ってこなかったつらい経験をしていた。 ――いつも考え方がとてもポジティブですが、結婚前からそうだったのでしょうか? 実は10代のときに、死のうと思って実行に移したことがあるんです。そこまで思い詰めた原因は、学校で起きた盗難事件の犯人に仕立て上げられたことでした。自分のことを全員が泥棒だと見ている気がして、人間不信になりました。もともと中学校に入ってから、周りが優秀で勉強にもついていけないし、面白いことよりもカッコいいことが評価されて、自分をアピールする場所もなくなっていて。とにかく、楽しいと思う時間が1ミリもなかった。本当に明日が来るのが嫌になって、それで死のうと思ったんです。それで、いざ自殺しようとしたときに湧いたのが、「俺はお笑い芸人として舞台に立てずに死ぬんや。一回でいいから立ちたかったな」という後悔の気持ちでした。 救急車で運ばれて、1ヵ月半ほど点滴だけで寝たきりの生活になったんですが、その時思った事は「人間はそう簡単に死ねないんだな。じゃあ生きるしかない」そして、「この先、自然に死ぬまでは生き続けよう」と心に決めた出来事でもありました。自分にとって、大きなターニングポイントでしたね。今となっては、あの時死ななくて本当に良かったと思いますし、人生の早い段階で挫折を味わえてよかったとも思います。 退院後に学校へ行ったら、周りは全然犯人扱いしてこなくて、普通に話しかけてくれたことも驚きでした。自分が思うほどには周りは何にも気にしていなかったんです。「これはもしかしたらただの被害妄想やったんかもしれへん。もう自分を追い詰める考え方はやめよう」と思いました。 今ではいつも「今日が一番最高」と思っています。1秒も前に戻りたくないですね。最高な日を更新していきたいから、毎日楽しいことしかやりたくない。子どもたちにも、人に迷惑をかけること以外であれば、何でもやりたいことに挑戦していってほしいと思います。