「エムポックス」はどう広まる? WHOが「緊急事態」を宣言、致死率の高いウイルスが流行
エムポックスはどのように広がるのか?
どちらの系統のエムポックスも、ウイルスに感染した動物や、ウイルスに汚染されたもの(衣類、寝具、タオルなど)に直接触れることで感染する。 ウイルスに感染した人との濃厚接触によっても感染する。キス、会話によって飛び散る飛沫に触れたり吸い込んだりする、感染者の皮膚や口、性器にできた病変に直接触れるなどだ。 病変の部位は「小さなウイルス工場」だと、米疾病対策センター(CDC)の疫学者であるアンドレア・マッコラム氏は言う。CDCによれば、潜伏期間は3~17日で、エムポックスの症状がある人は、「発疹が完全に治癒し、新しい皮膚の層ができるまで」はほかの人に感染させてしまう可能性があるという。
エムポックスは性感染症?
2022年に流行した際は、男性と性交渉を行う男性の感染が圧倒的に多かった。公衆衛生当局にとって、このコミュニティーに汚名を着せることなく人々に情報を伝えるのは難しい課題だった。 WHOの感染症専門家であるデビッド・ヘイマン氏は当時、AP通信に、スペインとベルギーで開催された同性愛者のイベントでの性行為によって流行が増幅されたようだと語った。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)の初期に大規模な集会で感染が広まったように、2022年のエムポックスも、こうしたイベントが国際的な広まりにつながった。 しかし、エムポックスは性行為だけで広まる感染症ではないことを示す証拠があると、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のウイルス学者であるバーナード・モス氏は言う。症状が出ている人がいれば、皮膚どうしの接触(性行為を含む)や、ベッドシーツやタオルや衣服との接触によって広まるのだ。 実際、アフリカでの過去の集団感染では、あらゆる年齢層の女性や子どもや男性が感染している。「このウイルスは、1つの性別や1つの集団の中にとどまるものではありません」と、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校公衆衛生学部教授で感染症疫学者のアン・リモイン氏は警告する。 重要なのは、人々に知識を伝えることだ。「むやみに心配させたくはないのですが、自分の身は自分で守るという意識が大切です」と、WHOのエムポックス対策責任者であるロザムンド・ルイス氏は言う。「一人ひとりが自分のリスクを知り、それを管理する必要があるのです」