【解説】拉致被害者家族会 踏み込んだ“制裁解除”苦渋の判断のワケ 岸田首相に「必ず動かして」切実な訴え
北朝鮮による拉致被害者の家族会と支援団体が、岸田首相と面会し、2月25日に決定した新たな活動方針を手渡した。家族の高齢化が深刻になる中、「苦渋の判断」でこれまで以上に、北朝鮮に対する“対話路線”に踏み込んだ今回の方針。家族らは、岸田首相に解決に向けた具体的な行動を求めた。 4日午後、首相官邸で岸田首相と面会した拉致被害者の家族たち。手渡したのは、2月25日に家族会と支援団体の「救う会」が決定した新たな活動方針だ。 横田めぐみさんの母・早紀江さん(88) 「本当に岸田総理の間に、必ずこのことは動かしていただきたい」 娘・めぐみさんが拉致されてから46年。88歳になった横田早紀江さんは、岸田首相を見据え、力強く訴えかけた。
■「独自制裁解除」に初めて踏み込んだ活動方針
2月25日。活動方針を議論するため、今年も全国から家族が都内の会場に集まった。活動方針は、被害者家族の当事者としての「声」を日本政府だけでなく北朝鮮に対して示すもので、毎年話し合われてきた。 今回、新たに盛り込まれたのが、「親の世代の家族が存命のうちに全拉致被害者の一括帰国が実現するなら、我が国が人道支援を行うことと、我が国がかけている独自制裁を解除することに反対しない」という一文だ。 政府が認定している・いないにかかわらず、すべての拉致被害者の即時一括帰国が実現するという条件のもと、日本政府が独自に北朝鮮に対してかけている制裁の解除に「反対しない」とする内容。 去年2月に決定した活動方針で、同じ条件で北朝鮮への「人道支援に反対しない」という内容を盛り込み、“対話路線”へのかじを切っていたが、今年は、制裁の「解除」にまで踏み込んだのだ。
■長年訴え続けてきた「制裁」
北朝鮮への対応はどうあるべきか―。家族会は長年、北朝鮮に圧力をかける「制裁」が必要と主張してきた。核・ミサイル開発に資金を絶つことなどにより、北朝鮮から“対話への歩み寄り”を引き出す狙いがあった。しかし一転して、救出活動の軸の一つであった制裁の「解除に反対しない」と踏み込んだ背景には、家族たちを追い詰める差し迫った状況がある。 拉致被害者家族会代表 横田めぐみさんの弟・横田拓也さん(55) 「(北朝鮮に)平静を保って対話をしましょうなんていうのは、本当は苦しいです。それでも私はめぐみに会いたいし、母に再会してもらいたい」 「高齢の親世代の家族に万が一のことがあってはいけないという心配」 「ゆずれるところはゆずる」「そのための苦渋の判断です」