【急増する女性の“痔”】「検査や治療が恥ずかしい」人は必読! 専門医が教える痔のアレコレ
痔で手術になることはめったにありません!
検査を終えて自分の痔の状態が判明したら、その後はどんな治療がおこなわれるのでしょう? 「女性に多い切れ痔は、適切な治療をおこなえばほとんど治ります。大抵は、軟膏を塗りつつ、便の状態を良くするための指導をおこないます。便がどのくらい改善するかによりますが、だいたい1週間から1ヵ月ぐらいで治ります。 いぼ痔もまずは塗り薬や座薬での治療と、いぼ痔を引き起こす生活習慣の改善、排便習慣の改善指導をおこないます。ただしこちらは保存療法といって、完治を目指すのではなく、肛門の不快感や痛み、出血などの症状を改善させることがメインとなります」 痔というと手術と思う方も多いかもしれませんが、昨今はいぼ痔で手術をおこなうことはほんの1~2割程度なんだそう。 「いぼ痔は、ずっと持ったままでも生命にかかわるわけではありません。『痛くてツラい』、『出血が止まらない』など不快症状で日常生活が上手く営めないなど悩まされている方には『手術をしましょうか』と提案しています。そうでない人には“上手く付き合っていく方法〟を指導し、症状がない時はそのまま様子をみて、症状があるときに病院に来て薬をもらって症状を改善させる、という方がほとんどです。 それでも中には、『手術をして綺麗さっぱり取ってしまいたい』という人もいます。昨今は日帰り手術でおこなわれるようになっており、お風呂も手術の翌日から入ってかまいません。以前より気軽に受けられるようになってきていますが、ただし一回取ったら終わりというわけではない。同じ生活を続けている限りまた痔ができる可能性は高いんです。ですからまずはお尻に負担をかけないよう、生活習慣の改善や排便習慣の改善を心がけるべき。それだけでも痔の症状は大きく軽減されるはずですから」
必ず病院に行くべき? 市販薬でケアしてもOK?
ちなみに痔の症状があるのに放置していると、どうなってしまうのでしょう? よく不調によっては、放って置くと“がん化”すると言われるものもありますが…… 「切れ痔やいぼ痔ががんになることはありません。先ほどもお伝えしたように、上手に付き合い続けながらずっと持っていてもかまわないもの。中にはいぼ痔を持っているものの、症状がないためそのまま気づかず一生を終える人もいるんです。切れ痔も、切れてもすぐ治る人も多いので、一回ぐらいなら『アイタ!』となっても様子を見ていいと思います。 ただ“あな痔”の場合は、症状が治まったり自然に治ることは稀。長い期間放置しているとこちらはがん化することがあるので、大抵の場合は手術をおこないます」 病院へ行かずとも、ドラッグストアには多数の痔のお薬が売られています。切れ痔やいぼ痔なら、市販薬で治療しても良いもの? 「病院へ来るのが恥ずかしいという方は、まずは市販薬を試してみてもいいと思います。それで改善しない場合は肛門科に来てください。 市販薬で改善するなら病院へ行く必要はないかというと、そういうわけではありません。その一番の理由は、痔ではなく他の病気の可能性があるため。痔と同じように肛門から出血する病気に、直腸がんや肛門がん、大腸がんがあります。とくに痔を持っていることを自覚している人ほど、出血しても『これは痔のせい』と思い込んで、病気の発見が遅れることが多いんです。あまりに出血を繰り返す、あるいは便の状態が細くなってきた、といったことがある場合は、他の病気を疑ってほしいと思います」 草間先生によると、昔からみると女性の外来患者はかなり増えているとのこと。年齢も10代から90代までと幅広いそう。もしかして……と思ったら、恥ずかしがらずに肛門科を訪れてみてください!
【Profile】草間 香(くさま かほる)先生
1993年金沢医科大学卒業。外科専門医、日本大腸肛門病学会専門医取得。2007年に「草間かほるクリニック」(東京都港区)を会員。テレビや雑誌などでも、分かりやすく痔の解説をおこなっている。著書に『痔の悩みが解決する本 安心ハンドブック』(IDP出版)がある。